ただ愛する仲 Ⅱ【Hikaru.I】 (ページ39)

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A side

言い出しっぺの岩本さんはまだ来ない。

〈只今、電話に出ることが出来ません＿＿＿＿〉

待っていると、とうとう銀行の人が来てしまった。
融資の件を1人で進めるなんて、不安だ。

慰霊公園建設案

「遺族会はまだ活動をしてるんですか？」

渡した資料を真顔で見られるのは恐怖だ。

『慰霊碑が出来るまで一時的に…』

「大変ですね」

渡された名刺。

□□銀行出資課長
宮舘涼太

涼「…なにか？」

『いや、大変そうなお仕事ですね』

涼「補償金で勉強し、出世しましたから
　亡くなった父のおかげですね。」

少し微笑むと、向き直った。

涼「同意しません。」

『え、』

涼「慰霊碑の建設には反対です」

『…我々は善意で、』

涼「会社といえど殺人者が善意で？
　規則上、必要な緑地に慰霊公園と名付けて
　許しを乞う行為は望みません。」

そのまま立ち去ってしまった。
…結果は失敗だ。

その後すぐに外に出るとやっと岩本さんが。

『仕事、忘れてたの？』

照「いや…」

『なのにまた喧嘩を？』

初めて見た彼のスーツ姿。
けれど服は汚れていたし、唇は切れている。

照「もしかして会えなかった？」

『会えました〜。…だらしない格好だね』

頭の汚れを払ってあげると、子犬のように目を細めた。

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