ただ愛する仲【Hikaru.I】

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A side




仕事場から直行したのは、お父さんの所。



父「…あそこに、この前助けた人がい、る…」



言葉を遮って、離婚届を手渡す。





父「…なんでこれを？」


『なんでこんなの送ったの。…女でも出来た？』


父「いや、」


『違うんならなんで？
　 …このままで何の問題もないでしょう？』


父「だからだよ。母さんと俺は…
　 もう喧嘩することもなくなったんだ。
　 …終わらせたい。」





言いたいことは分かる。

本当に“何もなくなった”のだ。
話し合うことも、気持ちをぶつけ合うことも。





『お父さん、』


父「この辺も…工事に合わせて再開発するとか。
　 今の店も今年いっぱいだ。もう10年も経った。
　 …Aに母さんを任せっきりで悪いと思ってる。」


『謝らなくていい。夫婦なんだから、2人で話し合ってよ。
　 面倒でも逃げないのが家族でしょ？』




そう言って店を出た。



手前で幸せそうな家族が一緒に麺を啜っていた。


私たち家族には、平凡な日常が
戻らないという事実に胸が痛んだ。






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「っ…！あぶな！！」




青信号で渡ったのに配達屋のバイクに、
はねられそうになった。

手を引っ張っぱられて歩道に連れ戻される。



バイクの運転手はすっ転んだ。




『痛っ、…え、あの大丈夫ですか！？
　 すいません、手を貸して下さい…！』




助けてくれた男の人はまじまじとバイクを見る。
…あ、この人。



・



「そこで仕事を？」



・



この前、バス停で喋りかけてきた人だ。

…いやまずは、119番？いや、110番？



スマホで番号を打っていると、
その人に取り上げられた。





『…なに？』


「ヘルメットかぶっていないし、未成年だろ？
　 救急車は呼ばない方がいい？」




バイクの人は頷いた。



「お断りだとよ。」





そして、夜の街に消えていった。
…なんかムカつく。

そうだとしても助けてやんなよ。



『…えぇ〜。
　 動けます？あ〜、どうしよう。』







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照「っは、…おせっかいな女だ。」




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