迷子の初恋 (ページ49)

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人生で一度樹side ページ49

「樹が起こしてくれないからじゃん」

『お前が起こすって言ったじゃん昨日』

「え？そうだっけ？あ、言った気がしてきた」

『はい、夜ご飯ご馳走様でーす』

月日が経つのは早い

Aの隣が定位置になって

Aと一緒に過ごすようになって

Aが俺の彼女になって

俺らはあの時より大人になって

大学を卒業したんだ

そりゃたまには言い合いもあるんだけど

「見てて腹立つお前らの感じ」

なんて北斗が年数を追うごとに俺らを冷やかな目で見るのも定番になって

そんな北斗の大事な大事な存在で俺にとっても大事な大事な存在が今日は帰ってくるわけでそんな大事な日に寝坊する俺ら

「ねえ、樹？また好きになったりしないよね？」

絶対Aも友達になれるよと連れて来ると
空港に着いた瞬間珍しく弱気で
珍しく嫉妬するような
Aの声が聞こえて思わず俺は立ち止まる

ばかだな

もうさ俺の中でAだけが愛する人となってることをAは知らないの？

本当はもっとかっこいい場所でかっこよく決めたかったんだけど

少しだけ不安そうに俺を見るAに一歩近付いて

人生で一度しか言わないからよく聞いとけよなんて心で呟いて

『A？
お前さ一生俺にいってらっしゃいとおかえりって言ってくれる？』

目を見開いたAは目を潤ませると俺の首に手を回して返事をした

「うん」

全くもう相変わらずなんだから

さあ、A？

一生かけてたっぷり愛してあげるからお前は俺にちゃんとついて来いよ

fin...