迷子の初恋 (ページ47)

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違う世界で出会ったらページ47

「Aから呼び出しとか珍しい」

翔太はベンチに座ると煙草に火をつけた

翔太の煙草を吸う姿は好きだ

翔太の煙草の香りも好きだ

翔太の耳馴染みのいい低めの声も好きだ

でもその好きは恋とか愛とかその好きとは違うんだ

『翔太？あのさ』

「なあA？」

言葉を被せられるともう次に言いたかった言葉が出てくることはないと

私はずっとずっとずっとずっとそう思ってたし

漫画やドラマでもそういうものだった

『ん？』

翔太を覗き込めば煙草の火を消した翔太は私を見つめて優しく笑い

「好きな奴のとこいけよ」

今早泣き選手権が行われるなら私は間違いなく1番だと思う

翔太がぼやけて見えて

唇を噛む私の頭を撫でる翔太は

「ダサいこと言うけど今日だけ許せよ
俺お前と普通に恋愛したかったわ」

なんてそんなこと言うから溢れる涙は止まらなくて

それでも翔太は泣き止めとも泣くなよとも言わない

翔太はただずっとずっと頭を優しく撫で続けたんだ

私は翔太がそんな人って知ってたから

『ねえ翔太？違う世界で出会ったらさ
1番に出会って私に恋してね』

なんて翔太よりダサい言葉を口にした

「ばかなの？当たり前だろ？」

ほら、翔太はこんな人なんだもん

でもさ今は違う

私と翔太から恋が生まれることはない

『ありがとう』

私のありがとうを優しく笑って受け取った翔太は次に会った時

何事もなかったかのようにいつも通りだったんだ

言おうとした言葉を飲み込むこともいいんじゃないかと私はこの時初めて思ったんだ