迷子の初恋 (ページ44)

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お昼前少し肌寒くなってきたな、なんて考えながら翔太の家を出て自分の家に向かうんだ

外はやたら眩しくて反対にじめっとした自分の奥底のどす黒い感情が私を一気に飲み込む

思いドアを開けて樹の靴を確認して短いため息をつく

どうして私は変われないんだろう

汚い身体をシャワーで流しても流してもきれいになんてならなくて
鏡に映る自分はとことん腐りきってる嫌な女だ
バスタオルを頭から被ってリビングに入れば

「おかえりA」

樹はソファーに座ったまま私を見ていつも通り笑うんだ

「帰ってこないならそう言えよ
全くもう」

なにも聞かずなにも言わずにいつも通りに笑うんだ

『樹？』

「ほーら髪乾かすよ」

ソファーに座る樹の横に座れば樹はいつも通りバスタオルに触れる

『ねえ樹？』

「なんも言うなよ」

『え？』

「なんも言うな
なんも聞かねえからなんも言うな
なんも知らなかったら俺はなんも言わねえし
お願いだからなんも言わないで」

樹はその後黙って私の髪を乾かして
何もなかったみたいにその後はいつも通り笑ってた

ねえ樹？

傷つけたよね

ねえ樹？

この時私は初めて知ったよ

大切な人を傷つけることは自分が傷つくよりもっと辛いものだって

樹を傷つける私はとことん最低だって