初めて ページ38
「お前ねモニター確認してから開けろよ」
チャイムの音に玄関を開けると樹が立っていて
いっときは家に居座るなんて言いながら
自分の家から荷物を持って私の家にやって来た
樹の言葉を無視してリビングのソファーに座ると当たり前のように樹は隣に座りながら
「1人になりたかったら言って俺家戻るから」
そんなこと笑いながら呟いた
「別にベランダ出るし大丈夫」
呟いた私に樹はくしゃっと笑う
「別に俺が居てもいいよってことでしょ？」
「うるさい」
ソファーから立ち上がりお風呂場に駆け込んだ
シャワーを浴びながら鏡に映る自分の頬はやけに赤くなっていて
樹の一言でこんなに反応するんだと自分の恋愛経験の乏しさを実感したんだ
樹もお風呂に行って髪も濡れたままボーッとしてると
「風邪引くっしょ」
樹はタオルで髪を拭きながら私の頭に手を置いた
「ここ座んな」
足を広げて股の間の地べたを指差すとにっこり笑って私を見て
黙って移動する私の髪を触りながら
ドライヤーで慣れた手つきで乾かしてくれたんだ
そんなことされたのなんて初めてで
熱くない？とか
痛くない？とか
樹はいつだってどんな時だって優しい
「ねえA渡辺くんのこと好きなの？」
ドライヤーが終わって樹は私の髪を触りながら小さな声で
樹らしくない弱っちぃ声で
そんなことを私に問いかけたんだ
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作者名：むぅ
| 作成日時：2018年4月29日 23時
