迷子の初恋 (ページ24)

今日:18 hit、昨日:3 hit、合計:404,647 hit

足りない？樹side ページ24

少し先に彼女が見えて
ひとりで頬づえをつきながら外を見ている姿はやけに絵になる

「そんなに気になるならお前から行けよ」

「あいつから来ないと意味ないから」

「とはいえ俺が伝えてもう1ヶ月だけど？忘れられてない？」

北斗は呆れながら呟いた
確かにご飯に行ったのはもう随分前で彼女の髪色も少し変わってて
時間だけが無駄にたつんだ

「少しだけなんか変わったよね？」

京本くんの呟きに高地が反応して

「確かにねなんか美人度増したよね」

それを北斗は真顔で突っ込んだ

「そこではない気がするけどね」

高地はにこにこ笑いながら言い直すと

「少しだけ柔らかくなったよね」

「とげとげしてたのが1本減ったくらいだけど」

なんてまた京本くんの言葉に北斗と高地は笑ってて
俺もそんな3人と笑いながら話してる時だったんだ
京本くんは俺の斜め後ろをジーっと見つめると小さな声で呟いた

「あら迷子ちゃんどうしたの？」

ゆっくり振り返るとそこにはAが立っていて少しびっくりした顔で見つめる俺に

『これ足りない』

一言呟いて絆創膏の箱を差し出した彼女から俺は箱を受け取って

「まあまあ入ってたはずなんだけど？もう無いの？」

『元々こんなのじゃ足りない』

目をそらしながらAが発した言葉の本当の意味はきっともっと深い深い傷のことだろう

「お前が本当に足りないのはこれか？」

箱を揺らして笑った俺をAは真っ直ぐ見つめてて

困った顔で少し笑うと

『…そうじゃないってわかってるくせに….樹あの…』

彼女が言葉を続けようとした瞬間

「A？」

少し先から大学生の鏡の声がした
彼を目で捉えるとAは口を閉じて彼を見て

「お前さ連絡無視すんなよまじで
七五三掛呼んでるぞ～」

渡辺くんは手招きした後背を向けて歩き出し

Aもゆっくり足を進めようとしたのを見て

咄嗟に俺は彼女の手をつかんだ