迷子の初恋 (ページ18)

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全部受け止めるよ樹side ページ18

遠くに見える大学生の鏡とAの姿
仲が良いような特別な関係のような
でもそこにはなんか足りないんだ
隣で京本くんは呟いた

「なんも生まれないのにね」

「ん？」

「足りないもん同士一緒にいてもそこにはなんも生まれない
お互い分かってんだろうねそれも」

「分かってるのにさ…」

「そんだけ弱いんだよ
強そうにしてさ自分でも強いって思ってんだろうけど弱いからこそだろ？
それに居心地がいいだろうからね」

「それってすげえ苦しいね」

俺の呟いた言葉に京本くんは優しい顔で笑う

「正直樹にはそんな苦しい恋なんてしてほしくないけどね
…まあもう手遅れだろうから止めないけど」

「苦しい恋か」

「でもそれも俺の捉え方だからね
樹がそれを幸せな恋っていうならそうなんだと思うし」

「そうはならなそう」

「そっか…でもさ今回は樹の恋なんだから周りなんて気にせずぶっ飛ばしちゃえばいいよ
樹が本気になったら樹のこと好きにならないわけないもん
樹は絶対すげえいい恋できると思ってるからね
俺は昔からねもちろん今も」

京本くんは言いながら笑ってて

その言葉に高校の時おんなじようなこと言われたなって俺も少し笑う

この前触れたAはもう少し触れると

壊れそうなくらいもろくて

自分のことを汚いものだと心底自分を軽蔑してるようだった

同情なんてするつもりない

でもなんで

あれから君は絆創膏つけてるんだろ？

「俺が本当のAをAに教えてあげなきゃ」

「いいんじゃない？
ドアを開けないなら壊せばいいんだからいっそ全部壊しちゃえ」

そうだ

俺が全部教えるから

傷なんておったまま飛び込んでくればいい

俺は全部受け止める