45 Hokutoside ページ47
「俺から見ればなんの傷でもねーよ
俺はお前の心に染み付いた傷の方が心配なんだけど？
誰にも頼らなかったんだろ？
お前さあよく一人で耐えたな
俺が半分もらう
俺がそのお前の過去半分もらうから
我慢すんな
でも、A
よく頑張ったね」
まだまだ子供の俺はこんな言葉しか出てこなくて
ただ震える彼女を守ってあげたくて
誰にも言えずひとりで頑張ってきた
小さな彼女を認めてあげたくて
同情や綺麗事かなんて
考える余裕もない
俺の思ったままの言葉を伝えて
1ミリでも伝わればいいそんな気持ちで
俺は彼女のテーピングをゆっくり巻き直したんだ
彼女はテーピングを巻いてる俺の手を握り俯きながら小さな声で呟いた
「ありがと」
そんな彼女の手を俺はギュッと握ることしかできなくて
かける言葉なんて見つかんなくて
その瞬間
テーピングの上にひとつ染みができた
長年我慢してきたんだろう
涙は彼女の目から溢れ出て
触れたら壊れちゃいそうな彼女に
俺はワレモノを触るような
そんな気持ちで慣れないくせに出来る限り優しく優しく
彼女の涙を拭った
女の涙なんてめんどくさくてうっとおしかったはずなのに
彼女の涙にはそんな感情なんて生まれなくて
こんな時に
彼女の半分
いや、全部を背負いたい
そんな場違いなことを思いながら
彼女の涙が止まるのを待ったんだ
少しして落ち着いた彼女は
カウンターに閉まっててたのか
煙草をゴミ箱へと捨てた
そんな彼女は
さっきより少し大人っぽくて
さっきより少しだけ清々しい顔をしてた
「俺
お前のそういう素直なとこ好き」
彼女を見て思わず口から言葉が出てきて
彼女は少し赤く腫れた目で
俺を真っ直ぐ見つめて
ふわっと笑った
俺はその時
改めて君に恋をした
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作者名：むぅ
| 作成日時：2017年12月18日 1時
