44 Hokutoside ページ46
香水くさくない彼女からほのかに香るのはおそらく煙草の香りだろう
男なのか？男がいるのか？
それとも自分か？なんて疑問は俺の胸の中でいくら問いかけたところで答えは出ない
それならいっそ彼女にはっきり聞けばいい
ただ男ではありませんようにその願いを込めて彼女が煙草を吸うを前提で聞いたのは俺の単なる願望だった
彼女は少し間をあけて
認めたんだ
でもその彼女の顔は今まで見てきた彼女の中で一番弱っちくて一番辛そうだった
人の過去なんて興味ないと思ってたけど
お前は何を抱えててるのか
気になって俺は俺の出来る限り精一杯優しく触れたんだ
未練がましい
なんていう彼女は
やっぱりまだまだもっと辛そうで
その奥にあるものを俺にはさらけ出してほしいそう思うのは俺の我儘だったよな
その先は
暴力を振るわれても
きっと誰にも頼れなかったんだろう
治る傷だという彼女
でも治らない傷をつけられた
そんな風に言ったんだ
それは心じゃないの？
そう思った時
彼女はゆっくりと
袖をまくる
この前コスプレをさせられてた時
気にはなっていたんだ
丁寧に巻かれたそのテーピングは
その時は捻ったりそんなもんかと思ってた
彼女のテーピングを解く手は少し震えてて
この先は俺は同情も綺麗事も言わずに
彼女へ言葉をかけれるほど大人なのかと
少しだけさっき自分の言った言葉を後悔したんだ
外されたそこには
痛々しい傷が残っていて
彼女はゆっくり口を開いた
1回ならよかった
傷は心に染み付いた
なんて数じゃない心にだってとっくに傷はついてたはず
普通なら見るのも怖くなる煙草を吸う彼女の傷はきっと思ってるより深いんだろう
傷を持ってたら恋愛が出来にくい
そう言った彼女は寂しそうで
その傷は腕の傷？
それとも心の傷？
そんなの俺には関係ない
ただこの傷が俺が彼女を判断する
ひとつになんてならないことを伝えたくて
ひとりでこの傷と戦ってきた彼女に伝えたくて
ゆっくりとテーピングを巻き直す彼女の手を止めたんだ
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作者名：むぅ
| 作成日時：2017年12月18日 1時
