▽ LUV LUV. (ページ29)

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安田：ミルク32 ページ29

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勢いよくベッドに飛び込んだら、ホコリ舞うからやめてって呆れたようなため息と苦笑いが聞こえてきた

『…またフラれた』

「そっか」

Aのその当たって砕けろ精神は尊敬できるけど、フられた時はほんまに砕けてまうんどうにかできひん？って彼は例に漏れずホットミルクを注いだマグカップをベッドに伏している私に受け取るよう促した

『…奥さんいるんだって』

更には子供までいるときたらもう手の打ちようがない

ブハッと私を馬鹿にしたように笑う彼の肩を殴った

「次は慎重に見極めて当たるんやで」

『男運無い』

思い返せば、初詣のおみくじ、

私が一目散に目を向けたのはもちろん恋愛の欄

去年、章大とおみくじを引いた時には

今の人が最上だからもう迷うなと書いてあった

今の人もクソも誰もいないんだけどってぽつりと呟いたら隣にいた章大が手を叩いて嬉しそうに笑っていた

今年は章大が尼崎の実家に帰ってたから1人でおみくじ引きに行ったんだけど何て書いてあったと思う？

「諦めなさい」

『しかも、ひらがなで書いてるから余計リアルだしね』

冷たく、たった7文字で”あきらめなさい”だって

幸い、私は女の子にしては珍しく占いとか信じないタチだから良かったものの

『とにかく、もう失敗しないように。誤った選択をしないようにします』

よしって心に決めてぬるくなったミルクを啜った

「ん、応援してる」

そう言って彼は私の髪をくしゃっと触った

なんて素敵な友達

章大っていう最高の友達に巡り会えたことに運を使い果たしちゃって、男運までも吸い取られてしまったのかもしれない

『それだわ』

「なに？」

何にも無いと言って、残りのミルクを全て飲み干した

『よし、じゃあ帰る』

「もう大丈夫？」

『うん、だいぶ元気出た
ありがと』

マグカップをベットサイドテーブルに置いて、カバンを肩にぶら下げた

じゃあね、と玄関まで見送ってくれた章大に小さく手を振る

それに応えて彼もにっこりと笑いながらバイバイと手を振った

「好きやで」

パタンと扉が閉まる乾いた音に紛れたその言葉にはまだ気付かない

*安田：ミルク32
( 上手くはいかないわね )
( 今度は、と思ったんだけどな )

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