ここへおいで

期限なしの休暇を ページ4

「ルハン起きて。」









珍しいな。
疲れが溜まってるのかな。
もう少しだけ寝かせてあげよう。








「ルハン？
あ、もう起きてたね。おはよう。」
「………」
「ルハン？」









起き上がってはいるものの反応のない彼。









「どうしたの？体調悪い？」
「ん？ううん、なんでもない。」
「…ご飯、出来てるからね。」









私もゆっくりはしていられないから、彼の様子が気になりつつも支度に戻る。









洗面所で洗濯機を回したり用事を済ませてリビングに戻っても朝食は手付かずのまま。









寝室の扉を開けると、彼はさっきと同じ姿勢でいる。









「ルハン、遅刻しちゃうよ？」









遅刻というワードに反応した彼は枕元の携帯を確認すると、やっとベッドから出て着替え出した。







朝食を食べてる時間はなさそうだ。
ラップをかけていると彼が寝室から出てきた。









「ごめん…」
「ん？」
「食べる時間なくて…」
「今日はちょっとのんびりだったから仕方ないよ。」
「せっかく作ってくれたのに、ほんとにごめん…」









彼の謝り方は、たかが一食分食べなかっただけとは思えないほど申し訳なさそうだ。









「そんなに謝らなくても大丈夫だよ？
別に捨てるわけじゃないんだから。」
「うん。でも、ほんとにごめん…」
「…ルハン、ほんとに遅刻しちゃう。」









いつまでも謝りそうな彼に、また遅刻のワードを出して洗面所に向かわせる。









様子がおかしいと思い始めたのはこの頃からで
新生活を始めて一ヶ月ほど経った時だった。









彼は朝起きて動き出すまでにとても時間がかかるようになった。
呼びかけても返事がなかったり、表情が乏しくなった。
夜もお酒を飲んでから寝ることが増えたし、
あまり深く眠れていないように思える。
食欲は減退して少し痩せてしまったし、
些細なことで必要以上に謝るようになった。









ここまで来ると思い当たる節があったけど
一時的なものかもしれないし、
彼に ”どうしちゃったの？” なんて聞いてはいけないと思った。









彼もなにかおかしいって感じてるはずだから。
わざわざ指摘なんてされたくないだろう。









お酒の量と、それから栄養重視の食事を取らせるように気をつけて数週間様子を見たけれど、
彼はある日、ついにベッドから起き上がることが出来なくなってしまった。

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