Dream 4 ページ4
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そう話しかけてきたのは、胡散臭い、あの黒尾くんだった。
化粧室から出てすぐのところに詐欺師は立っていて。
なぜ、なぜなのだろう。
バレー部の皆で思い出話に花を咲かせていると思っていたのに。
そう見せかけてここに居るっていうところが、詐欺というか手品で騙すというか。
まぁ、良く考えれば、暫くは他の人と会話を交わしているだろうと
予測したのはこっちの勝手であることは間違いないし
決して黒尾くんに欺かれた訳ではないのだが。
なんか、やっぱりどこか胡散臭い。
酔っ払った頭でそんなことをフル回転で考えるものの
何をどうしたらいいのか分からず。
何も言わない私に痺れを切らしたのか
黒尾くんがこちらに1歩、近づく。
｢阿川さん、｣
｢だ、大丈夫です1人で帰るのでお構いなく｣
｢……そうとは言わずにさ、元同級生として僕と話しません？｣
急なことで少し早口めに言ってしまった私とは反対に
落ち着いた様子でゆったり口調の黒尾くん。
｢結構です。私酔っ払ってるし、きっと話し相手にならないですよ｣
｢酔っ払ってるなら尚更1人で帰すのは危険ですよ、おじょーさん｣
｢まだ時間早いですし、本当に、大丈夫です｣
｢最近時間関係なく物騒だから危険だと僕は思うかな｣
もし僕が君に何かしたら訴えていいからさ、なんて訴えても絶対負けることはないとでも言わんばかりの表情。
他人のスピード感や流れに呑まれず、自分の領域に組み込もうとしてくる感じがやっぱり苦手で。
今の酔っ払いの私じゃ強敵黒尾くんに勝てるわけもないし
無理に断る方が労力を使うのではないかとさえ思えてくる。
あぁ、これ以上何を言っても敵わないな。
もうどうにでもなれ。
相手にそう思わせるのが上手いところが黒尾くんの怖いところだ。
｢……わかりました｣
｢！｣
｢……駅までですからね｣
｢じゃ、駅までっことで｣
そう言って黒尾くんが隣に立ち、歩き出す。
ただ隣を歩くだけ。
たったそれだけのことだ。一瞬の夢だと思えばいい。
胡散臭さに騙されて夢を見ているだけだ、と。
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作者名：倫 | 作成日時：2023年6月30日 15時
