Dream 11 ページ11
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ある程度バレーボールのルールが理解出来たところで試合は終わった。
結果はシュヴァイデン アドラーズの勝利。
これだけルールを知れば、あとは試合を何度も見て
選手の特徴とバレーボールの面白さに気づくだけ。
もう、隣にいるこの男の息遣いを聞く必要はない。
｢ルール説明ありがとうございました｣
｢……すんげー、営業スマイルだな｣
｢じゃ、私はここで失礼しますね｣
続々と観客が出口に向かう流れに乗ってその場から離れる。
昨日と今日。
数年ぶりの同級生との再会。
久しぶりに会ったからといって、淡い記憶がよみがえってくるわけじゃないし思い出に華をさかせるわけでもない。
｢……あー、疲れた｣
もう、手強い相手と戦って負けるのは懲り懲りだ。
この自惚れと無心の攻防をいち早く終わらせて
すべてを夢として片付けたい。
胡散臭さに夢を見てしまった、と。
｢……ちょっと、おジョーさん｣
｢っ、！｣
腕が熱を帯びて会場の照明が私よりも大きな体を地面に映し出す。
｢まさか、お礼もなしにいなくなるつもり？｣
｢……っ、さっきお礼言ったけど、｣
｢あんなに丁寧に教えてあげたのになー｣
｢……何が言いたいわけ、｣
足を止めて振り返れば、意地悪そうに笑う黒尾くんがいる。
何度も見たはずの妖しげなそれに、また激しく動揺して。
逃げなきゃまずいのに、掴まれた腕がそうはさせない。
黒尾くんの瞳に、また吸い込まれる。
｢……言葉だけじゃ足りないから、俺とデートしてくれません？｣
｢は、｣
息をするように出てくる詐欺師の甘い言葉は意味を成さない。
そう言い聞かせたはずなのに。
｢それじゃ、行こうか｣
｢…っ、え、ちょっと、！｣
返事も待たず強引に腕を引いていくその背中が、夢として片付けてしまいたい現実に私をいさせ続けるのだ。
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作者名：倫 | 作成日時：2023年6月30日 15時
