episode 36 ページ39
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この時期、もし私が1人になりたいと思ったらどこに行くだろう。
「……いた、」
そう考えてたどり着いた先は電気のついていない図書室。
予想通り学ラン姿の彼は壁に寄りかかるようにして座っていた。
「……っ、よくここにいるってわかったね」
「体育祭の時期に本読む人なんていないからね」
私が起てた足音で顔を上げた赤葦くんは
今朝よりも顔色を悪くしていて。
一瞬驚いた様子を見せたけどすぐに笑顔で私に話しか
ける。
「たしかにそうだね。
あ、Aもしかして1人になりたい時間だったの?」
………普段通りを演じようとするのやめてよ。
私に気遣ってるのバレバレだし。
「……体調悪いなら何で言ってくれなかったの、」
「……別に悪くないよ、少し暑さにやられただけ」
心配の言葉をかけても笑顔を崩さず平気だと言う赤葦くんに
腹が立ってくる。
何で頼りにしてくれないんだろうって。
無理は禁物だと言ったときわかったって返事したくせに
何で限界まで頑張るんだろうって。
赤葦くんが責任者と応援団を掛け持ちしてるんじゃないかって
薄々気づいてたのに何もしなかった私にも腹が立って
行き場のない怒りをどうしたらいいのか分からなくなる。
今辛いのは間違いなく赤葦くんの方で
泣いたらさらに気遣わせるってわかってるのに
体は言うことを聞かない。
「……っ、A?」
やめて。
優しい口調で名前を呼びながら手を伸ばさないでよ。
大丈夫?って手を差し出したいのは私の方なの。
「……なんで泣いてるの?」
ほんとにやめて。
そんな優しく私に触らないで。
優しくされたら私の体は歯止めが利かなくなる。
「……やだ、」
「…A?」
「今の赤葦くん、やだ」
私の目元に触れていた手が離れる。
離れたにもかかわらず目元はまだ熱くて。
制御できなくなった体から言いたくない言葉が溶け出す。
「…気遣ってばっかりで無理してる今の赤葦くんなんて、嫌だ、」
保健室で見たことのある悲しそうな表情が目の前にあるというのに
それでも止まることを知らない私の口は思いのままに動く。
「こんな限界になるまで頑張る赤葦くんの隣になんて、いたくないっ、」
________ 『俺の隣にいる阿川さんは苦しそうに見えないから』
私の隣にいる赤葦くんは苦しそうにしか見えないよ。
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倫(プロフ) - カルマさん» ありがとうございます!コメント嬉しいです!頑張りますっ......! (2020年6月19日 23時) (レス) id: 48fe9f4fbb (このIDを非表示/違反報告)
カルマ - この作品大好きです!完結まで頑張ってください! (2020年6月19日 20時) (レス) id: 7ca463c807 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:倫 | 作成日時:2020年5月2日 0時