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episode 32 ページ35

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5月中旬。
体育祭まであと一週間と少し。


山車やパレードの準備も最終段階に入り
授業時間だけでなく放課後の時間も居残りする期間なった。

この期間部活動も最小限となって
全校生徒のほとんどが体育祭一色に染まる。


青色のペンキで汚れた皆の服の上に
補色であるオレンジ色の夕日が差し込んでいる。





「A、また腕に絵の具ついてる」


「…え、あぁ、ほんとだ。あとで洗わなきゃ」





私の隣で青色のビニールテープを切っていた赤葦くんは
その手を止めて床に落ちていたコンビニ袋をつかむ。




「はい、誰のか知らないけど使っていいと思うよ」


「…よく入ってるってわかったね」





渡されたのはコンビニでもらうおしぼり。
誰かがパンでも買いに行って袋は放置していたのだろう。


ほんとに赤葦くんは周りを見ているというか
観察力を駆使しすぎていると思う。

こんなの普通気づかないよ。





「今拭いておけばあとで洗うの楽でしょ」


「そうだね。ありがとう」





あの日から私がどんな私であろうと
こんな風に観察力を使うのはやめなくて
逆に八方美人と言われていたころよりも
使う頻度が多くなっている気がする。





「はは、赤葦くんAのお世話係みたい!」




目の前で私と同じ作業をしていた沙羅にも
こんなことを言われるぐらいにだ。





「手間かかる子だからねAは」




誰が世話のかかる子だとでも言い返したいところだが
ここは教室である。

それをわかってて笑う赤葦くんは
この状況をさぞかし楽しんでいることだろう。



…後で二人になる機会があったらたっぷり文句言ってやる。






「あかーーし!!!時間だぞー!!」







廊下の方から木兎先輩の声が聞こえてる。
相変わらず威勢のいいこと。


このテンションの高さに慣れている赤葦くんは
何一つ表情を変えず声の聞こえる方へ向かって行った。





「A、赤葦くんっていつもこの時間になったら
 木兎先輩に呼ばれるよね。何の用なの?」


「部活の話だって言ってたよ」


「そうなんだ。

 …んー、でもそれにしては長くない?
 いつも30分後ぐらいに戻ってくるじゃん」



「まぁたしかに長いかもしれないけど
 バレー部の主将と副主将だし話すこと多いんじゃない?

 ね、Aもそう思わない?」






同意を求める奈々の言葉に反射的に頷いてしまった。

でも、沙羅の疑問が私の中で引っかかったのも事実だった。

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(プロフ) - カルマさん» ありがとうございます!コメント嬉しいです!頑張りますっ......! (2020年6月19日 23時) (レス) id: 48fe9f4fbb (このIDを非表示/違反報告)
カルマ - この作品大好きです!完結まで頑張ってください! (2020年6月19日 20時) (レス) id: 7ca463c807 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2020年5月2日 0時

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