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28. Maybe... ページ27

「じゃ、那須も来たことだし」

帰るか。


出口を見据えてそう呟いた彼に


申し訳なさそうな顔をした那須くんは


「わざわざありがとうございました」

「いいのいいの。可愛い後輩ちゃんが困ってたら助けるのが年上の役目でしょ?」


軽めに片目をウィンクさせて

にひぃーっとまっしろな歯を見せながら笑うその男。




「また今度ゆっくり話そ。」


「あ、よければお茶でも…」


ヒラヒラ手を振りながらドアを開けて

「ぼっちゃん…」


なんて困ったようにため息混じりに漏らした黒服のおじさんを連れてったその

橋本くんと呼ばれた彼は


慌てたように引き止める那須くんを


「大丈夫。それに今日は瑞稀の妹との約束もあるし」

たったその一言で冷たく言い放つ。

「っ…」


「じゃあねぇ」



パタンと音を立てて閉まるドアを


「なす、くん?」


固まった表情のまま見つめた那須くん


ぎゅっと握りしめた手のひらは


血が滲んで来そうなくらいに圧迫されていて


「那須くん。」

「へ?あ、先輩…。」


それも一瞬だけ。


迷ったように


その綺麗な硝子玉のような瞳は揺れた。


「大丈夫?」

「はい!全然平気です!」

「でも、」


「気のせいだと思いますよ?」


ふにゃっていつものように緩められた口元が

「そう?」

「はい!」


すこしだけ。



ほんのすこしだけ




ぎごちなかったのも


気のせいなのかな?

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作者名:ぽん | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/my.php  
作成日時:2018年6月21日 4時

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