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23. My Cage ページ22

那須くんが風邪で休んだ日から約一ヶ月

6月の半ばに差し掛かって

雨が多くなる季節になりました、

そんなとある月曜日

朝から感じる体の怠みと重みに

少し顔をしかめて迎えたお昼の時間


「今日も、む、りかなぁ?」

教室の窓を打ち付ける雨粒にため息をついて



新しい水色の風呂敷で包まれたお弁当箱を見つめる。

今月に入ってからまだ2回しかお昼一緒に食べれてないのに....。



さすがに那須くんも中庭にはいかないよね

この前交換したばかりのメッセージアプリを開こうと手をスカートのポケットに伸ばして

慌てて引っ込める、

ダメダメ、那須くんだってきっと佐藤くんとか、浮所くんとかとご飯食べたいだろうし。


「うん。我慢、我慢...」



それでも教室のじめっとした空気に


「ふう...。」

やっぱり耐えれるほど私は強くなかった。


屋上へと繋がる階段の裏で


何度目かもわからない空気が体から抜ける音に

惨めさが積もる。

「なんだかな」




「Aさ、これから...部活ない日とか


一緒に帰ろ?」

今日、朝の別れ際に

呟かれたいつも通りの柔らかい優斗くんの声が

頭の中を再生してて

「サラはどうしたのさ...。」


今までの自分だったら嬉しくて、でも照れ臭くて


一日中それだけで頭の中を埋め尽くされて

心の中が甘く、桃色になってたはずなのに...。



いつからだろう。

私の中の中心が

少しずつ、少しずつ



優斗くんとは違った誰かに移り変わっていくことになり始めたのは


「も!やっと見つかった....」


「へ?....なすく、」


「「いた!Aせんぱい!!」」


「佐藤くんと浮所くんも...、。」


どさどさっとドミノのごとく三人まとめて流れ込んできた姿に
耐えきれず吹き出す。

「ぷっ...」

「あ、ちょ笑わないでくださいよぉ!」




心の中の檻で


狭い世界の中にとどまっていたあの時の私


優斗くんとサラが結ばれた時の孤独感に


一人闇の中で膝を抱えてた私にそっと手をさしのばして


一筋の光の元まで、


暖かい場所へと


連れ出してくれたのが


「あ、先輩!今日のおかずなんですか!」

一つ年下の彼の何気ない言葉と


「ふふ、今日も美味しそうですね。」

一気に体が安心するような

真っ直ぐすぎる瞳と


優しい目元の下がった笑顔だったことをあの時耳にしたらなんて言うだろう?

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作者名:ぽん | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/my.php  
作成日時:2018年6月21日 4時

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