恋愛エクスタシー [Yuto] (ページ19)

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20. Long Time No See ページ19

「優斗～！お前今までなんでこなかったんだよ！」

一年ぶりじゃんか！

まるで我が子の帰省だと言わんばかりにギャーギャーわめき散らしながら

店に入ってきた優斗くんを二人で座っていた四人テーブルに有無を言わせずに座らせた彼は

また何度目かもわからない背中を見せては厨房の中へと消えてゆく

岸くんの騒ぎを聞きつけ、厨房から飛び出してきた

バイトくんたちは

お客様にもかかわらず警戒心剥き出し状態

さっきまで懐いて尻尾をフリフリしていたはずの浮所くんは

ムギュッと唇を結びながら不安の色が詰まった目で辺りをキョロキョロ助けを求めるように眺めるし、

佐藤くんに至っては表情を一切変えずにただ瞳の温度を冷ややかに下げてじっと優斗くんに視線を投げかけている。

ぁあ。きっとこの子たちに接客業は無理だ。

そう感じたは言うまでもない。

「お待たせーい」

不意に流れる不穏な空気をぶち破るように

オレンジジュース片手に戻ってきた岸くんは

音を立てて優斗くんの前にそれを置くと

私の横に座る優斗くんに優しい色をした瞳で見つめた。

それにくすぐったそうに視線をはぐらかした優斗くん。

苦し紛れに辺りを見回して

「ね、岸くん。岩橋さんは？」

「ああ。いわげん？いわげんは今アメリカで留学中。」

彼の中で止まっていたこの場所の時間を埋め尽くそうとしていた。

そんな気まずそうな優斗くんなんて御構い無しに

私と彼に交互へ視線を移したかと思ったら

「優斗、お前彼女もいいけど幼馴染も大切にしろよ」

「ちょ、岸くん！」

とんでもない爆弾を放っていくこの男

空気読めないけど絶賛彼女募集中です。

「あ、そうだ。ちょうど二人に見せたいものが...」

またまたその茶色いセットされた短髪を揺らして

席を離れた岸くん。

忙しいやつ。

遠くなる背中を見つめて心の中で呟いた言葉は

＿ガチャン

「お冷です。」

めちゃくちゃ冷たい声と手荒な音で現実に引き戻される。

「あ、ありがとう」

戸惑うように視線を上げた優斗くんの目の前に置かれてる氷がカランコロン泳ぎ回っているグラスを置いたのは

「いいえ。別に」

素晴らしいくらいのぶっきらぼうな声でそっぽを向いた佐藤くんだった。