月に寝転んで (ページ20)

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ある真夏日のことだった。
いつも通り朝起きて、朝メシを食べて、家を出た。

大介は体調を崩してるとかで寝込んでいて、朝は起きてこなかった。
父と母は2人とも仕事で既に家を開けていたから、出かける前に大介に声をかけた。

「んじゃ、行ってくるよー。体調大丈夫？」

「ん！大丈夫！いってら〜。」

いつも通りの明るい声が聞こえて、俺はホッと胸を撫で下ろす。
それから登校して、授業受けて、食堂で大して美味くも無いラーメンを啜っている時だった。

母親から電話がかかってきた。
大介が事故に遭ったから、今すぐ病院に来いというものだった。

全身の血の気が引いて、慌てて学校を飛び出した。
タクシーで病院まで向かい、救急の待合席で座る両親の姿を泣きそうになりながら探した。

「…だ、大介は…？」
「いま、手術中。」
「なんで事故？家にいなかったの？」
「ミケが、脱走したみたいで。大介、追いかけて行っちゃったんだって。」

ミケは、大介が可愛がっている猫だった。
考えがまとまらなくて、世界がバラバラに崩れてしまいそうだった。大介の手術が終わるのを待っている時間は、まるで永遠にも感じられた。

大介は命こそ助かったものの、怪我による損傷が大きく、しばらくはICUという場所で管理されることになった。
明日には麻酔が解けるはずですから、とベテランそうな医師に言われ、俺は安心で腰を抜かしそうになった。