月に寝転んで (ページ18)

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「きっと、翔太さんが行ったら喜びますよ。」

「いや、俺、嫌われてるんで。」

大介は度々翔太くんのことを話題に出していた。
嫌ってなんて、いないと思う。
ただ、自分とは違う存在だということは、何故か強調して言っていたけれど。

「そんなことないと思うよ。」

「うーん、まあ、そうなんですかね。」

ちょっとだけ、沈黙が続く。
ポツリと、翔太さんが口を開く。

「あの…ネコ、逃げたって聞きました。
んで、阿部さんが見つけたって。」

「そうだね、あの時は焦った。」

翔太くんは少し自嘲的に笑った。
何か失敗をした時に、誤魔化して笑うみたいな笑顔だった。

「良かったです。

俺、失敗してるんですよ。
昔も同じようなことがあって。

それから、大介は俺のこと恨んでるんです。
無理も無いと思います。」

シャチが逃げ出したとき、大介はほとんどパニックを起こしていた。過去のことがトラウマになっているのであれば、確かに説明はつく。

「よかったら、中に入りませんか？」

翔太くんは少し迷ったようだけど、渋々と言った感じで家に上がってくれた。
大介からは家のものは自由に使っていいと言われているからお言葉に甘えて紅茶を作って、翔太くんの前に置いた。

「もし、翔太さんが辛く無かったら。
話、聞かせてくれないかな。」

「話って、その時の？」

「そう。
僕、大介くんから翔太さんの話はたまに聞いてたんだよ。
でも、全然嫌ってなんかったよ。
きっと2人はすれ違ってるだけなんだと思う。
お節介かもしれないけど、聞かせてほしい。
もしここだけの話にして欲しかったら、絶対誰にも言わない。
信用出来なければ、話さなくても良いよ。」

翔太くんは数秒戸惑ったあと、ゆっくりと頷いてくれた。

「…じゃあ、話します。
楽しい話じゃ、無いですけど。
俺たちが、高校生の時の話です。」