Two steps ページ3
その少し前の冬、ベラルーシの首都ミンスクでは。
「・・・兄さん、どこにいるの・・・?」
プラチナブロンド(天然)の美少女が、窓の外を眺めている。吹雪で窓がガタガタ鳴るのも気にしな
い。溜息で窓ガラスが曇る。
少女のいる部屋の扉が開き、中年女が入って来た。
「ナータ、カーテンを閉めなさい。寒いでしょう?」
「ううん。それより母さん、兄さんはまだ見つからないの?」
「・・・そのことでね、父さんから話があるの。」
母親の顔も憂鬱そうだった。最悪の事態が少女__ナターリヤの頭をよぎったが、それを無視して
足早にリビングへ向かう。
父親は、ペチカの前にあるソファに座っていた。
「父さん、どうしたの?」
ナターリヤが声をかけても、顔を向けない。
「ナータ、最悪の事態が起こってしまった。」
綺麗なベラルーシ語で告げられる。ロシア語の方が堪能な彼女には聞き取りにくかったが、父の沈
痛な面持ちから全てを察した。
彼女は幼い頃、実の両親が交通事故で亡くなるのと前後して兄が行方不明になってしまった。それ
を不憫に思ったアルロフスキー夫妻が彼女を引き取り、兄の捜索願も出してくれた。
ナターリヤにとって、その捜索が打ち切られるのは兄との永遠の別れ__万死に値するものだが、
その事態が起きてしまったのだ。
「そんな!・・・・・・兄さん・・・」
兄が失踪した時、彼女はまだ三歳だったが、兄の顔は鮮明に覚えている。
ふわふわとした粉雪の様な微笑み。
それを、もう一度見たい。
「さぁ、明日は晴れるみたいだし、新しい教科書を買いに行きましょう!」
母が気丈に言うも、雰囲気は晴れない。
どういう偶然か、アルロフスキー夫妻もナターリヤも魔法使いだ。そして同じスリザリンである。
と、電話がけたたましく鳴った。
「はい、アルロフスキーです・・・はい、ナータならいますよ。ナータ、カークランドさんからお
話があるそうよ。」
「カークランド?」
イギリスの名門が何の用なのか。若干苛々しながら受話機を受け取る。
「変わりました・・・・・・え!?兄さんが!?本当ですか!?・・・はい、すぐそちらへ行きま
す!」
娘の明るい声音に、何事かと夫妻はそちらを見た。しかしそんな彼等を尻目にナターリヤは大急ぎ
で部屋に戻り、トランクに着替えなどを詰め始める。
「ナータ、どうした?」
「兄さんが見つかったって!明日の便でカークランド家に行くわ!」
そう言う彼女の目は潤んでいた。
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Freiheit@Ernst - 完結おめでとうございます!すごく面白かったです。水滸伝私も大好きなので楽しみにしてます!ウズウズ (2014年9月20日 15時) (レス) id: 0dd1897602 (このIDを非表示/違反報告)
カオリ(プロフ) - レリゴー!さん» 喜んでいただけて良かったです。こちらこそリクエストありがとうございます! (2014年8月26日 15時) (携帯から) (レス) id: 40a6f8a3a7 (このIDを非表示/違反報告)
レリゴー! - カオリさん、イラスト拝見しました!皆かわいくて、これであれこれ想像するともうニヨニヨが止まらない・・・!!ありがとうございました! (2014年8月26日 9時) (レス) id: 9c6a128fd2 (このIDを非表示/違反報告)
Freiheit@Ernst - 続編おめでとうございます!新キャラ続出でとても楽しみです! (2014年8月24日 22時) (レス) id: 0dd1897602 (このIDを非表示/違反報告)
カオリ(プロフ) - 続編おめでとうございます!あと、イラスト描けましたよ♪ (2014年8月24日 20時) (レス) id: 21e1ae6953 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:レリゴー! | 作成日時:2014年8月23日 11時