魔法学園ヘタリア〜Walk to my friend〜

Ten steps ページ12

その後、あっさりと許可が下り、一行は令状片手にブラギンスキ邸に乗り込もうとしていた。

その間に、菊は燦と茉莉を迎えに行った。アルはやっぱり拗ねたままだ。マシューとヘレンは、イ

ライアス達に合流する為に屋敷を出発。それでもアルは来なかった。

「あぁ、ここにいましたか。」

菊がアルを見つけた。裏庭にあるゼラニウムの茂みの中に上手く隠れている。声をかけられると、

全身を震わせた。

「何だ・・・菊先生か。」

「すみません。驚かせてしまいましたか？」

「ううん。」

「隣り、よろしいですか？」

「うん。」

案外素直に頷く。菊がそっと顔を覗き込む。アルの目は充血して黄色くなっていた。顔もかなり青

白いし、髪にいつもの艶がない。

「まだ、許せませんか？」

「・・・・・・」

無言ということは、肯定しているのか。

「そうですよね。貴方だけ何も知らされず、仲間外れだったのですから。あ、そういえば。」

「・・・？」

「マザー・テレサが生前、貧困についてこの様な事を仰っていたそうです。"受け入れるけど、許

しはしない"と。」

「聞いたことはあるよ。」

「有名ですものね。ですがこの言葉、何も貧困に限ったことじゃないと、私は思うのです。」

「どういうことだい？」

「生きていれば、色んな人と会いますし、衝突だってします。それまで仲の良かった人とも、大喧

嘩をしたりすることだってあるんですよ。私も昔、親友のパーシー・ウィーズリーと殴り合いをし

ましてね。二人揃ってマダム・ポンフリーとマクゴナガル先生に、こってり絞られました。確か、

それぞれ三十点くらい減点されたんですよね・・・。ハリー・ポッター達が巻き返したので何とも

無かったんですが。」

「・・・・・・」

「"許す"のは無理でも、多少時間はかかるでしょうが"受け入れる"ことは出来るはずです。拒み続

けても、自分がしんどくなるだけですし。勿論家族でも、同じですよ。」

「・・・そうかな？」

「少なくとも、私はそう思います。ですが、貴方はまだ幼い。この事実を受け入れるにはかなり時

間が＿＿＿」

「そんな事ないさ！」

急にアルが立ち上がった。そして菊を見る。その目は、夏の沖縄の海に似ていた。

「俺、てっきり"今"許さなくちゃいけないのかと思ってたけど、"今"じゃなくてもいいのかい？」

「そうですよ。」

「なら、俺は受け入れるよ！」

そして、ドンっと胸を叩く。

「だって俺は、世界のヒーローだからね！」2

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