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「あ!Aちゃんっ!!!」



小児病棟に入るための最後の扉を開けると、



仁王立ちして待っていた師長さん。




この扉を超えると、面会証が必要になる、その扉。




「あ、すみません。」


思わずちょっとお辞儀する。…主治医よりもここの病棟の管理をするこの師長さんの方がよっぽど怖いし、絶対逆らえない。



怒る理由もわかる。だから、この人には逆らえない。




「すみません、僕がAちゃんに声かけちゃって。


それで彼女に、君が描く絵を見てみたい、なんて話してたら遅くなっちゃいました。」



隣で、スケッチブックやらを持ってくれてた井ノ原さんが言う。






「あぁ〜井ノ原さん。


…てか、あなた成人病棟の方ですよね?」





一瞬なにか違う師長さんが見えた気がしたけど、多分気のせい。






ついでに怒られる井ノ原さんは悪びれた様子も無く、頭を下げたときに一瞬こちらを見て、いたずらな笑顔を見せた。




「今日だけ、許して。」


私が師長さんに言う。


井ノ原さんは悪くないから、という意味を込めて。



すると、夕食はきちんと食べること、とだけ言い私たちを部屋に返してくれた。





病室に向かう道中、見える大きな窓。





夜の景色もまた、好きなんだよね。



思わず立ち止まって見てしまう。



「小児病棟の景色、こんなに良いんだね。」


隣で井ノ原さんも言う。






「私、ここでいつもスケッチしてるんです。」



ポツンと呟くようにして言ってみる。




すると井ノ原さんは本来の目的を思い出したのか、





「あ!早く絵見たい!Aちゃんっ!早く行こっ。」



私の点滴を入れてない左手をパッと掴んで、小走りする。








なんか新鮮で、ドキドキして楽しかった。






その走ったのが師長さんにバレて、無言の圧をかけられたのはまぁ…忘れてください。

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作者名:藍琉 | 作者ホームページ:http://.uranai.riane.jarrck  
作成日時:2021年11月28日 18時

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