□ テン ページ11
テン
．
Aと名乗る彼女を家の近くまで送った後、
僕がいつも寝泊まりしている場所…、言うならば僕の「 職場 」に戻ると
まだ店に残っていたクンと鉢合わせた。
TN「 何だ、クンまだいたの 」
僕の傷だらけの顔を見て、クンは眉を顰める。
KN「 ……誰にやられた 」
TN「 あぁこれ？ 今はもう痛くないから大丈夫だよ 」
KN「 大丈夫なわけないだろ…、消毒するからちょっと待ってて 」
帰ってくるの遅い、って怒られるかと思ったのに。
何だかんだで、いつも僕が帰ってくるまで待っていてくれるクン。
心配性すぎるんだよ、君は
TN「 路地裏で寝てたらね、通りすがりの女の子に死体だと思われちゃった 」
KN「 ヤー、またそんな所で寝て…… 」
TN「 その子すっごい健気で優しいの。
死体扱いしちゃってごめんなさい！って、
こんな可愛いハンカチまで貸してくれて 」
薔薇の刺繍が施されたレースのハンカチ。
右下にはピンクの文字で「 A 」って描いてあるから、
きっと誰かからのプレゼントだろう。
…申し訳ないな。洗って返さなきゃ。
KN「 ……珍しいね。チタポンが女の子の話なんて 」
TN「 僕だって恋愛対象はちゃんと女の子なんだけど？ 」
もう少しだけ一緒に居たかった、とか
連絡先聞いておけばよかった、とか
そんなことを思ったのは僕だけなんだろうな。
TN「 まぁ…、会う口実があるからいっか 」
僕はそっとハンカチをポケットの中に入れた。
．
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作者名：てん x他1人 | 作成日時：2021年7月20日 0時
