目の前の君と (ページ17)

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「あの、これから家に帰ってご飯作るんです。良かったらたべていきませんか？」

私は何を言ってるんやろう
口から出てくる言葉は私の心とチグハグで
自分の言葉に自分でびっくりする

いいながら、どんどん顔が真っ赤になっていくのがわかる

すると彼はクスクスと笑い出した

「ずいぶん積極的やね」

そんなふうに笑われて
違うと言いたいのにこんな時に言葉はでない

「私、何も言えなかったんです。この前あなたが来たとき、自分の自己紹介だけして帰っちゃうから。」

「結城Aちゃん。教えてくれたやん。」

「それはあなたが勝手に！」

「川西です。川西賢志郎。改めて」

「ゆ、結城Aです。」

何故かまたテンプレートの自己紹介をして
途端に道端でこんなやりとりをする自分が恥ずかしくなった
少しの沈黙の後、先に口を開いたのは彼だった。

「さすがに今日お邪魔するのは悪いから明日にしませんか？Aちゃん、仕事何時まで？」

「し、しちじ」

辛うじてそれだけ伝えた私に
彼は柔らかい微笑みで
じゃあまた明日といって振り返って行った

取り残された私の耳にはセミの声が響いた