いちばん遠くから愛にきた/uszw ページ8
その後、海岸を並んで歩いて海に沈む夕陽を眺めていた。
前を歩く牛沢は急に振り返ると「ん」と手を差し出してきた。
「?」と思い、とりあえず握手みたいに手を差し出すと「違う」と言って出した手を握られた。
「な、な、なな何?!」
歩く速度を遅めて隣に並んだ牛沢はぷっと吹き出すと「動揺し過ぎじゃない?」と笑っていた。
それでも牛沢の顔が赤く見えたのは夕陽に光っていたせいか、それとも。
「A」
牛沢の低く落ち着いた声で名前を呼ばれた。
脳が揺れる。
心臓を鷲掴みにされたような感覚。
ドクンと波打つ脈が全身を揺らす。
「俺が面白い話をしよう」
繋がれていた手はいつの間にか離れていて、向き合う形で今度は腕を握られていた。
面白い話…あの時のことがフラッシュバックする、今更返事されるの?
振られる最後の思い出作りに海に来てくれたかと思うと血の気が引く。
友達以上恋人未満は恋人に近く見えても、こんなにも、遠い。
「Aのこと」
心の暗さと比例して項垂れていた顔をパッと上げた。
困ったような笑顔の牛沢と目線が重なり合う。
「……好きだよ」
瞬間、ぶわっと意識していないのに涙が出た。
ほらね、泣くからちゃんと先に面白い話してって言ったのに、と手に持っていた牛沢の上着で涙を拭かれた。
「うう……牛沢の……匂いする……」
涙ぐみながら本音を吐露すると「変態」と笑いながら上着を押し付けられた。
**
「遅い」
手洗い場みたいなところを見つけて足を洗っている時に、そう告げると「は?」と怪訝な顔された。
そして続けざまに「俺が、好きでもない女と二人で何回も遊びに出掛けると思ってんの?」と何とも恥ずかしいセリフが飛び出した。
わたしは「……殺し文句ですね」と言ってから目線を逸らして、照れた頬を手の平で隠した。
車に乗り込んで出発する直前に「行きも帰りも運転させてごめん」と謝りながらシートベルトを引っ張り出していたら、突然目の前に大きな闇が見えた……と思ったら、唇に柔らかい感触。
「運転料ね、あと次はちゃんと目を閉じろ」
そう言った牛沢は余裕そうな顔をしていたけど耳まで真っ赤でちょっと安心した。
鳴り止まない心臓が「この人のことが好き」と言う気持ちを代弁していた。
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luco(プロフ) - SNOWさん» SNOW様コメントと感想ありがとうございます!どきどき楽しんで頂けていたら嬉しいです。そして脱字のご指摘ありがとうございます!日々確認チェックしてるのですが何かと誤字や脱字が多くお恥ずかしい限りです…! (2018年9月4日 19時) (レス) id: 2a3978e9c4 (このIDを非表示/違反報告)
SNOW - とてもどきどきしました! ありがとうございます。ほんの些細なことですが、P25 牛沢さんの12行目が見なかっ事になってます!指摘コメント失礼しました。 (2018年9月4日 16時) (レス) id: 3badbdf8e1 (このIDを非表示/違反報告)
luco(プロフ) - 零亞さん» 零亞様、感動するお褒めの言葉の数々ありがとうございます!わたしも3人とgtmnさんが大好きなので走る筆が止まらないのです…!これからも自分のペースにはなりますが、更新していくので変わらずご愛顧頂けると嬉しいです! (2018年9月2日 1時) (レス) id: 2a3978e9c4 (このIDを非表示/違反報告)
零亞(プロフ) - lucoさん» 返信ありがとうございます!私、kyさん、rtさん、uszwさんが大好きで、いつもlukoさんの神文才にドキドキしながら読ませて頂いてます!これからも応援してます! (2018年9月1日 22時) (レス) id: f09712beba (このIDを非表示/違反報告)
luco(プロフ) - 零亞さん» 零亞様コメントありがとうございます!そうです!大正解です^^気付けて頂けて嬉しいです!も〜も〜よ〜ぐるって名前のセンスが好きなのでまた何かのタイミングで出すかもです! (2018年9月1日 19時) (レス) id: 2a3978e9c4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:luco | 作成日時:2018年8月11日 15時