【実l況l者】魔法の言の葉【短編集】

MISSION CLEAR/uszw ページ35

授業が終わる鐘が鳴り響くより数秒前にまた俺の方に向き直ったキヨは今度はニタニタとした顔をしていた。
彼女も大変だな、この気分屋と付き合うのは、とキヨの彼女に同情した。
「うっしーの好きな子もメイド服着るよ？」
「…………は？」
「あそこのクラス女子は全員メイド服らしいよ」
「……ふ、ふーん」

キヨに心の内を見せるのは癪でかなり動揺していたが気にならない素振りを見せた。
そうか、あの子はキヨの彼女と同じクラスだったけか。
俺は何とも言えないモヤモヤを抱えたままだったけれど、当初の目的のキヨのご機嫌とりは達成した。
MISSION CLEAR

次の日から文化祭準備期間が始まった。
俺達のクラスはお化け屋敷をやる。
お化け屋敷は食料の原価なども考えなくていい、他の出し物と比べ教室の装飾が大変なだけで当日のフリー時間も多く取れるために満場一致だった。
談笑しながらもそれなりに装飾物を作っていると女子の文化祭実行委員に「清川どこにいるか知らない？」とキレながら聞かれた。
隣にいたフジが「知らないけど…」と答えると「あいつ…」と憎しみがこもった声が返ってきた。
「……彼女のクラスだと思うけど」と俺が言いかけた瞬間「うっしー！！」と大声で俺を呼ぶ声が廊下から聞こえた。
実行委員の女子に途端に睨まれた。
連れて来いと言われ「へいへい」と返事をして廊下に出た。

「おい、相方キレてんぞ、仕事しろ」
そう、こいつフラフラどっか行きやがっていたけど文化祭実行委員なのだ。
「あ？いいからいいから」
手招きをされて近付くと紙切れを渡された。
不思議に思って紙を開くとLINEのIDとその下に書いてあった名前に目を見開いて驚いた。
「…え？……は？」
「契約完了」
そうやって妖しげに笑ったキヨは教室に戻って行った。
動揺を隠しきれなかったけど、キヨを教室に戻したことには変わりない。
MISSION CLEAR

紙を見つめて連絡出来ないまま文化祭前日になった。
Aさんとは1年生の時に同じクラスだった。
大人しく真面目そうな印象だったけど、噂で服を作るのが好きらしいというのを聞いていた。
その後、家庭科の時間にミシンに向かう姿が楽しそうで服飾が好きなんだな、と思っていた時には心が奪われていた。
恋に落ちる理由なんて単純なもんだ、特に男なんてそんなもんだろ。
会話したことがないほどでもないけど、特筆するほど話したこともない。
だからこそ、他人から貰った連絡先に気軽に連絡出来るほどの仲でもなかった。

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