【実l況l者】魔法の言の葉【短編集】

涙味のファースト・キス/ky ページ32

「荻上さんに告白された？！」
しーっ！しーっ！と人差し指を口に押し当てて慌てているレトさんを目前に俺は目を丸くした。
うるさいくらいに溜息を吐いてさも聞いて欲しそうにしていたから聞いたらこれかよ、自慢か、クソが。
「…良かったじゃん」
「ちゃうねん」
何が？とめんどくさそうに聞いてやる。
なんて優しい俺。
「驚き過ぎて、ちょっと考えさせてって言っちゃったんだよ！！」
「…………はあっ？！？！」

レトさんは、キヨくんAさんと仲良いでしょ？荻上さんに誤解解くように頼んでくれない？とへタルト大発揮していたから、丁重にお断りした。
明後日の終業式までに自分で言えと突き放したけれど、俺はレトさんのヘタレをナメていた。
終業式を終えて、久々に部活がなかったからうっしーとレトさんと家でゲームする約束をしていた。
運悪く日直でやっと終わって教室を出ようとしたらうっしーが迎えに来てくれた。
うっしーは「順調そうなキヨとは違ってこのへタルトどうにかしてよ」と泣きそうなレトさんの首根っこを掴んでいた。
「まさか…」
「…まさかのまさかよ」
「殺せー！！誰か俺を殺してくれー！！」
暴れるレトさんに優しい俺は助け舟を出すことにした。

「……祭り来るみたいだから、そこで言えば？」

え！？そうなの！？と顔を上げたレトさんに「ラストチャンスだと思うけど」と肩に手を置いた。
「キヨも言うからさ」とうっしーもレトさんの肩に手を置いた。
「おい」とツッコミを入れると「色濃く愛を育んで来たじゃない」とニヤニヤ顔で見られた。

祭りの当日にAからLINEで「背が高いから浴衣似合うしどうせ着るなら甚平じゃなくて浴衣にしなよ」と言われ、「持ってねーし着ねーよ」と返した割には即浴衣を買いに走った。
赤く染めた髪は既に襟足だけになっていたから兄ちゃんに薦められた紺の浴衣を買うことにした。
母ちゃんに着付けしてー！と頼むと「珍しい」と言われたけれど、お構い無しだった。
驚くかな、喜ぶかな、どんな反応してくれるのか、それだけが楽しみだった。

夜の19時に駅に待ち合わせた俺達は「あと2時間で祭り終わっちゃうじゃん！」と文句を言って祭りに向かってしまったぺーぺーを見捨てレトさんの為にAを探すことにした。
結局この3人かよ、とうっしーは文句を言っていたけどそれでも探す過程で祭りは楽しめた。

歩き続けていたら、歩行者天国の終わりに近い人気の少ない路肩に座る2人の女の子が目に入った。

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