【実l況l者】魔法の言の葉【短編集】

時間厳守なんてくそくらえ/rt ページ27

「俺さ、16時から実況撮ろうと思うんだけど」

そう話しかけられて時計を確認すると15時30分であることを指し示していた。
いつもはこれから撮るからとか、4人とか2人とかで撮る時は前もって教えてくれるのに妙だなと思ったけれど、特段気にもならなかった。
「……ひとり？」
「うん、そう」

16時か…昼間は暑くて外出もする気にもならなかった。
昼食を作る際に開けた冷蔵庫の中は寂しくて買い物に行かなくちゃなと思っていたからちょうどいいかもと思考を巡らせた。
「じゃあ、わたし夕市始まるし買い物行くから」
そうとなれば、いくら近くのスーパーだからってこのホットパンツで出歩くのは年齢的に恥ずかしい。
着替えようと読んでいたライトノベルにしおりを挟んでソファから立ち上がった時だった。

「まだ俺の話終わってない」
そう言ってソファの後ろから話しかけていたレトに腕を掴まれた。
「なぁに？」
夏のこの時間、1番西日が凄くて昼間とはまた違った暑さが左側の窓から差し込んできてレトを見たけれど眩しくてよく顔が見えなかった。

「……しない？」
「はっ？」

言われた瞬間よく意味がわからなくてすかさず間抜けな声が出てしまった。
眩しくて見えなかったはずなのに、雲の華麗なる移動のおかげで耳まで真っ赤なレトの顔がはっきりわたしの瞳に映し出された。
直接的な表現で誘われることなんて付き合って3年目になるけど、ほとんど…と言うかほぼない。
普段の姿や動画からは想像出来ないほど、そういうシチュエーションに持っていくのがうまいから、断りきれずまんまと丸め込まれる。
でも今のレトはどうだろうか、思春期の高校生が初めての彼女を誘うかの如く緊張して直接的な言葉を口にしている。

「…熱でもあるの？」
レトはわたしのその言葉を聞くなり口をへの字に曲げた。
「別に…したくないならいいけど」
言葉とは裏腹にわたしの腕を握る力は弱まっていない。

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