この憧憬は恋愛に転じるか/uszw ページ31
憧れは恋になるらしい。
少女漫画では定説だ!と力説する彼女とは中学時代からの付き合いだった。
俺は元来マイペースな人間だしその方が人生も楽だし自分を変えてまで憧れの人物とやらにお近付きになりたいなどと考えたことはなかった。
「そんなこと俺に話してどうすんの?わかるゥ〜♡って言って欲しいなら他の友達にでも言えよ」
「素っ気ないなあ」
ぷくと頬を膨らませたAは俺が世話した肉を皿に置いてやるとタレを丁寧に両面に塗り込んで口の中に放り込んだ。
「Aは幾つになっても自分で肉焼かないのな」
「ぽいぽい適当に焼かれるのやだから自分のペースで焼きたいって豪語してた牛沢くんてどこの牛沢くんですかぁ〜?」
それは紛れもないここにいる牛沢くんだ。
「それに今日は御礼の奢りだから甘えても良くない?」
「俺に収穫はなしなのに?」
出会いがないと発狂していた職場の友人の為にAに頼み込んで女子大生との合コンをセッティングして貰ったのは2週間前のことだった。
俺は就職でAは進学と進路は違ったが月1程度で飲みに行く仲だったから頼ってしまった。
俺も気合いを入れたが結局誰ともお近付きになれずに終わり合コンセッティングの時に「焼肉奢り」「乗った」と契約してしまった為、こんなとこで2人肉を焼いて食ってる訳だ。
「一次会で帰るうっしーに責任があるのでは?」
「それはわかる」
何で帰っちゃったの?と聞きながら静かな店内なのに大きな声で店員を呼び付けて3杯目くらいのグレープフルーツジュースを頼んだAは「うっしーもなんか飲む?」と気遣ってくれた。
グラスを見ると温くなったアルコールが揺れていた。
わかりやすく頷くと確認の有無もなく「あと生で!」と明るいAの声が響き渡った。
「平日にしては人いないな」
「車ないと来れないもんね」
大学生は時間が利くからと早々に運転免許を取得したAはおじーちゃん私に甘いからと彼女の祖父に買って貰ったらしい軽自動車で俺を送迎してくれた。
「2人きりも、まあ、いいじゃん?」
ストローでカラカラと氷を転がしながら眉を下げて少し頬を染めながら言うAから目を逸らして今しがた到着した冷えきったアルコールを流し込んだ。
Aは中2のバレンタインデーに俺に告白をしてきた。
中学生なんて女はそう言うものに目覚めるのに比べて男はガキだ。
可愛く包装された甘い匂いの中に包まれた手紙なんて後回しで腹ん中にそれを押し込んだ。
この憧憬は恋愛に転じるか/uszw→←きょうは全部ひとりじめできる日/ky
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luco(プロフ) - パンださん» パンだ様、コメントありがとうございます!読者様の楽しみになれて嬉しいです。今後もマイペースになりますが頑張りますのでこれからもよろしくお願いします! (2021年3月30日 2時) (レス) id: 2a3978e9c4 (このIDを非表示/違反報告)
パンだ - めちゃくちゃ面白くて楽しませて貰ってます!更新頑張って下さい! (2021年3月28日 23時) (レス) id: 0ce8abb0bc (このIDを非表示/違反報告)
luco(プロフ) - ららさん» らら様、コメントありがとうございます!lucoを知って頂いた上に全作品お読み頂けて嬉しいしかないです!微微調整しながら今後もマイペースに更新していくのでこれからもよろしくお願いします\(^^)/ (2020年2月23日 1時) (レス) id: 2a3978e9c4 (このIDを非表示/違反報告)
らら - 最近、lucoさんの事を知って今めちゃめちゃハマってます、!!lucoさんが書かれた作品全部読ませて頂きました!!きゅんきゅんして幸せです!笑 これからも頑張ってください!応援してます!! (2020年2月23日 1時) (レス) id: 55f78e88a7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:luco | 作成日時:2020年2月11日 1時