【実l況l者】さぁ、どんなオレに夢みてる？【ky】

甘くて苦いが交錯している ページ13

あれから平日5日連続で本当にキヨくんは律儀に時間に遅れることなく送り迎えをしてくれた。
1番懸念していたキヨくんの熱烈なファンの先輩に見られることもなく安心していたけれどいつ見られてもおかしくない。
それに会社バレしたとしても家までの道は割と人通りも多いから今後の送り迎えはいらないと伝えると少し不服そうにしていたけれどなんとか了承を得られた。

「その代わり家着いたら電話して」
「えっ……毎日ですか？！」
「あのね、恋人は毎日連絡取るもんなの！」

そう言えば確かにそんな話も聞いたことあるし生存確認の意味もあるだろうなと思い「おっけーです」と指で丸を作った。
珍しく飲み会がなかった金曜の帰りだったこともあり、散々デートデートと騒いでいたキヨくんは家付近になるとわざとらしく「あ！」と大きな声を出した。

「デートしよ、明日」
「と言うか今週末はだめです」
「は？何で？予定あんの？」

足を止め肩を掴まれ少し揺らされた。

さすがにキヨくん活動10周年の前日、当日を本物でもない彼女が占有するのは良くない。
でもきっとこんなこと言ったらキヨくんは絶対機嫌悪くなる。
予定があれば回避出来たのに残念ながらわたしの今週末の予定は溜まった家事をすることと、実況動画見て、日曜のキヨくん10周年タイムラインで神絵師の絵にハートを押すだけの予定しかない。
笑顔で誤魔化そうとしたのにそんなので誤魔化される訳なかった。

「だめ、絶対デートする、しなかったら……死んでやる」

あまりのメンヘラ発言に「え？！」と驚くと「俺に死んで欲しくなかったらデートしろ」と脅された。
冗談だと言うのはわかったけど目が本気でそんなことになったら困るどころの騒ぎじゃないから結局人生初のデートとやらの約束を取り付けられることとなった。

「どうせ、俺が活動10周年だからどうとか考えてんだろ？」

全てお見通しなんだよな〜と笑ったキヨくんは「当日じゃなきゃいいっしょ？」と少年のような顔を覗かせていた。

デート……デート？！
どこ行くんですか？と聞いたのに迎えに行くからとしか言われなかった。
当日ではないにしてもお祝いみたいなことするのはさすがにやり過ぎだろうか？
図々しくないか？
と言うかお祝いってどうすんの？！

ベッドにぽふっと身体を吸い込ませて一旦思考停止させる。

「……いつか終わることなのに……」

そう再認識するとどうしようもない気持ちに包まれる。
偽物なのに真摯な愛に毎日殺されそうだった。

危機管理能力レベル→←光に照らされても暗い瞳

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