【実l況l者】酸性インクのラブレター【企画短編】

愛しの心音リズム/fj ページ43

終電で最寄り駅に着いたらさすがに寝てるかと思って連絡は控えて家に着くと適温な部屋の中の中央にあるこたつで彼女が寝ていた。
何回も風邪ひくから寝るなら布団で寝なさいと割と語気強めに言っても寝てない寝てないと言って俺が寝るまで頑張って起きている。
……可愛いべ？
本当に可愛いんですよ、可愛い、可愛い。
可愛いからついつい甘やかしてしまうのも致し方ないことだけど風邪ひいて困るのは師走で仕事が忙しいA自身なのだ。

「A」

声を掛けて身体を揺らすと変な体勢で寝ていた為か割とすぐに目を開けた。
こたつで寝ていた為かいつも冷え性で手が冷たいAの手が温かい。
頬も体温上昇の為かいつもより赤みが強い。

「風邪ひくから……」

いつもの常套句を溜息混じりで言おうとしたら突然抱き着いてきて声が詰まった。
甘えたがりな彼女だから特段珍しい訳でもないけどいきなりはビックリする。

「どした？何かあった？」

適当にしゃがみ込んでいた為、カーペットの上に座り直すと肩に回っていた手が脇下から背中へと移動してぎゅーっと抱き着いてきた。
もうさすがに喋れるくらいは頭も動いてるはずなのに無言なのは何なんだ？
え？俺何かした？もしかしてAが大事に1枚ずつ食べてたクッキー1枚食べたのバレた？！

胸の中で顔を上げたAと目が合って微笑んで「ん？」と聞くと「甘えたい時にいないのは彼氏失格です」と言ってまたもや顔を胸の中に埋めて来た。
可愛くて好きで泣けるとアイドルについてはしゃいでいキヨの気持ち今の俺ならすごい共感出来るくらいに可愛くて好きで泣きそうになった。
普通の男なら重いとか俺にも甘えさせろとか言うのかもしれない。
でも俺は素直に甘えられない俺を自然に甘やかしてくれるAが直球で甘えてきてくれるならとことん甘やかしたい。
持ちつ持たれつってやつよ、いい関係でしょ？

「何考えてんの？」

ぐりぐりと胸に頭を擦りつけていたからか少し乱れた前髪のまま怪訝な表情でまたもや顔をあげたAの前髪を丁寧に手櫛で梳かすと眩しそうに目を細めた。

「Aが可愛くて泣きそうだなって話」

手で泣き真似をすると眉を下げて下手くそとか笑うからつられて笑う。
未だに抱き着いてるAの腰に手をまわしておでこにキスを降らしてからAの心音のタイミングに合わせるようにゆっくり、丁寧に、それでいて力強くぎゅっと、ぎゅーと抱きしめた。

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