【実l況l者】酸性インクのラブレター【企画短編】

きみがくれる嬉しいは幸せだ/ky ページ15

「わかりやすいのから説明してあげるよ」

泣きながらもちゃんと俺の声が耳に届いてたのかAは俺と向き合うようにしてソファから降りてラグの上に正座した。
俺は胡座をかいてAと向き合う。

「まず、哀ね」
「うん」
「わたしと半年会えないとします」
「え、何で、やだ」

怪訝な顔を向けると「例え話」と眉を下げて笑うAが可愛くて「かわいい」と言うと「もうそれいいから」と言いながらも頬緩んでんの丸わかりだぞ。

「だとしたら、どう思う？寂しい？」
「寂しい……けどその原因にイラつく」
「まあ、キヨくんらしいけど、哀しいって寂しいと同じだよ」
「そうなの？」
「わたしははそう思ってるから」

ってことは、ちょっとニュアンス違ぇかもしんねぇってことだな。
でも何となくうまくいかない時、Aに無性に慰めて欲しい時とかあっからそんな感じかー。

「OK」
「お、優秀」

おどけるAは「次は嬉しいか〜」と顎に自分の手をすりすりと擦り付けている。

「楽しーと同じ感じしねぇ？」
「キヨくんチャンネル登録200万人おめでとう！」
「へっ？」

腑抜けた声を出すと「どう思った？」とマイクに模した手を向けられた。

「……あ、嬉しい」
「ね、案外簡単でしょ？」

友達といると楽しい、Aといると楽しい、でもAといる時と、友達といる時、少し違う。
そっか、これが、嬉しいってやつか。
妙に心にすとんとハマった。

「わたしの嬉しいとキヨくんの嬉しいは少し違うかもしれないけど」

膝の上置いた手をいじりながら言いにくそうにしてるAの前髪を撫でると遠慮がちに言葉を続けた。

「わたしね、嬉しいって思うとキヨくんに結構伝えるでしょ？」

確かに会えない時もLINEで今日こんなことあって嬉しかったんだーみたいな連絡がくる。
俺が返しやすいように連絡事項と一緒に来るから自然と目を通す。

「嬉しいことあるとね、キヨくんと一緒に感じたかったなって思っていつも言いたくなるの」

えへへと笑いながら俺を見上げてきたAに「なんだそれ、かわいいやつ」とおでこにノーパワーのデコピンをかますと「痛くないやつだー」と嬉しそうにしていた。

「キヨくんが嬉しいわかりにくいなら、これからも嬉しいのおすそ分けしてあげるからね」

俺の彼女、めっちゃ良い子じゃね？
感動に打ちひしがれていたら唇に柔らかい感触が走った。
耳まで真っ赤になったAを覗き込む。

「もっとおすそ分け、してよ」

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