光速恋泥棒 ページ9
実の所、レトルトには一度告白していた。
返事は元彼女のせいで女の子のこと信用出来ない、でもAなら平気やし俺から言うから待っててと嬉しい結果だった。
歩美さん曰く「それキープじゃん」と言われ妙に納得してからもレトルトの猛追は凄まじかった。
毎日電話してきたり「好きだよ」「可愛い」も繰り返し言ってきた。
いや、わかっているんだ。
女の子がどうすれば喜ぶのか、どうすれば自分のことを好きになるのか。
わたし以外の女の子にも手を出していて当然レトルトの信用はガタ落ちだった。
そんな時、新人がやたらと入ってくる時期がおさまったのと繁忙期お疲れ様会ということで飲み会が開かれることになった。
スタッフは約100名くらいいたが、行きつけの店で飲みは無事開催された。
12人くらいの席が何卓か別れている席の中、レトルトはひとりぼっちだった。
あの時のことは一生忘れられない。
「レトルト、ひとり?」
「……A……そうみたいやな」
切なそうな寂しそうな顔で笑っていた。
その時は、自業自得だと思った。
自分のやってきたことは、いつか自分に返ってくるというのは昔からのママの教えだ。
「ふーん」
と言ってレトルトの隣の席に座った。
レトルトは驚いた表情をして「Aが嫌われるよ?他の席に行きなさい」とわたしを他の席に促した。
「何言ってんの?好きでここにいるんだよ」
「……そっかあ」
レトルトは少し酔ってるのか、初恋の相手に浮気された話をし始めた。
それから人の愛を信じられず、傷付くくらいなら相手を傷付けた方がマシと言う、まあ、なんとも自己愛が強い話をし始めた。
かわいそうな人なんだ。愛に飢えてるそんな人なんだ。
悪気は半々でないんだな、と思った。
「まあさ、わたしは現時点でレトルトのこと好きだから元気出しなさいな」と頭を撫でたら子供のように涙を目にいっぱい溜めて「Aだけは、俺のこと見捨てないでくれるん?」と聞かれた。
「……うん」と頷いたと同時にこの恋に完全に落とされた。
他の女の子にはしない、醜い嫉妬も、独占欲もきっとこの時のことが原因だ。
1年経った今、既に猛追はない。嫉妬と独占欲で縛り付けられ、時々甘い言葉をかけられるだけ。
鳴らない電話横目に1ヶ月泣き続けたのも記憶に新しい。
「俺から言うから待ってて」その何気なく発された言葉だけを大切に額縁に入れて心に飾っている。
その時を何も知らない子供のように待ち続けている。
笑顔ひとつで世界は輝く-1-→←シークレットシークレット-2-
96人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
luco(プロフ) - 秋葉さん» 秋葉様、コメントと、丁寧に読み込んで下さりありがとうございます。君をこんなふうにできるのは-2-をもう一度読んでくださるとわかるかと思います。自覚はしていないけど周りから見ると...って感じです。それでもわからなければまたご質問頂ければお答えします。 (2018年8月17日 0時) (レス) id: 2a3978e9c4 (このIDを非表示/違反報告)
秋葉(プロフ) - すごく面白かったです!ただ、私の読解力がなくて、キヨさんが初恋ってなんでか分かりません……ヒントとか頂けないでしょうか? (2018年8月17日 0時) (レス) id: 7505b4bacb (このIDを非表示/違反報告)
luco(プロフ) - 咲良さん» 咲良様コメントありがとうございます!具体的な感想もとても嬉しいです。全ての人に救済をしたかったのでそれが出来ていたようで安心しました。心に響く感想ありがとうございました! (2018年8月15日 3時) (レス) id: 2a3978e9c4 (このIDを非表示/違反報告)
咲良 - コメント失礼します!Another Story4の来世ではきみと、でタイトルから泣いてしまいました.. 色々な視点から物語が読めてとても素敵な作品だと思います!わたしはハッピーエンドが好きなので終わり方もとても良かったです。文章が変になってたらすみません、、! (2018年8月15日 2時) (レス) id: 50485c4a3d (このIDを非表示/違反報告)
luco(プロフ) - 煎茶さん» 煎茶様、コメントありがとうございます!少し、物語の転結急いでしまった感があるのですが、お褒めいただき嬉しいです。こちらこそありがとうございます……! (2018年7月13日 13時) (レス) id: 2a3978e9c4 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:luco | 作成日時:2018年6月11日 2時