【実l況l者】かみさまのこえよりめのまえのきみ【長編】

ぐるぐるまわる君の声-1- ページ14

レトルトside
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俺から仕掛けにいったはずやのに、

台風みたいな男だった。

俺の心の痛いところをぶっ刺したと思ったら意味のわからないことを吐いて帰って行くし、結局返り討ちにあっただけやん、カッコ悪。

第一、本当に人を好きになったことないなんて初対面の相手に対して言うか？
そもそもお前に俺の何がわかるっちゅーねん、爽やかくんかと思ったらアレは素が出たら相当口悪い男やん、俺にはわかる。
それに髪赤いとか何なん？
輩やん、仕掛ける前に怖くてドキドキした俺の身にもなれや。
全体を通して失礼にも程がある。

俺かて最初からこんな人間になったわけやない。

高校時代、本気で好きになった子がおった。
晴れて付き合うことになったが、浮気をされて別れた。
浮気も噂程度だったが、俺には許せなかった。
俺を傷付ける人間がどうしても許せなかった。

「レトルトは自分のことが1番大事なんだね」

いつだか、Aに寂しそうな笑顔で言われた。

「自分よりも大切な人っていたことある？」

そう言われて、胸を締め付けられるような気持ちになった。
俺は、お前には関係ないやろと無理矢理その会話を終わらせたっけ。

他の女が誰と話そうがどこで何してようが、何とも思わない。
でも、Aだけは俺の味方でいてくれる、実際にそうやったし、そう約束した。
俺はあの飲み会でのAの行動に救われたんや、この子となら俺はやり直せる、この子のこと幸せにい、確かにあの時そう思った。
いつかあの傷から立ち直ってきちんと向き合える人間になれたらその時は……って。

だからこそ、Aが他の男と話したり、俺以外と楽しそうにしていると、俺はイライラする。
それが、キヨくんの言ってた優しさに甘えてるってことなん？

考えてるだけのことでも、傷付いた記憶と言われたことが混ざりあって吐き気がする。

あれからいろんな奴と出会ってAのことも傷付けるだけ傷付けてると自覚はしているくせに、目を閉じると思い出すのはAやなくて制服を着て、俺に笑いかける初めての彼女。


俺は……やっぱり最低や。

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