重なる鍵を差し込むように ページ25
キヨくんが彼女に良いと聞いた個室居酒屋に入店した。
あの子が介抱してくれた子なのは確実だったけど、それをどう伝えようかカフェから居酒屋に行くまでの間、ずっと考えていた。
キヨくんは何や彼女が自己紹介してからというもの見るからにテンションが低い。
うっしーやガッチさんからは「彼女ちゃん帰っちゃったからって落ち込まないの」とからかわれていたから周りから見ればそう見えるかもしれん。
けど、あれは違う。
キヨくんの考えなんて俺にはわからんし、彼女とキヨくんの過去どう言ったやり取りがあったのかも詳しくは知らん。
それこそ、こうやって再会してからの彼女とキヨくんのことは全く知らん。
けど、少なからず彼女と紡いできた時間はあるはずや。
そうでなきゃ、カフェでのあの状況はありえん。
まず、キヨくんが彼女を信用してなければあんなことはせんし。
そうやって、少しずつ、築いてきた絆。
きっと俺らのことを気遣ってあんな風な物言いになったこともきっとキヨくんは理解してる。
だからこそ、どうにも出来なくて、前にも後ろにも進めなくてって気持ちは痛いほどにわかる。
キヨくんがこんなに深刻に考えてるとは思わんけど、まあ、雰囲気。
そうやって長年やってきたからね、俺らもさ。
うっしーとガッチさんに酔いがほどよくまわってきたあたりを見計らって俺はキヨくんに意を決して声を掛けた。
「なあ、キヨくん」
うっしーとガッチさんを見て笑いながらグラスを持っていたキヨくんがゆっくりこちらに顔を向けた。
「何かレトさん、今日おかしくない？」
脳内会議で忙しいからな、あまり顔には出てないはずやけど、見透かされていそうで少しドキッと変に心臓が動く。
「そう？それより、さっきの子の写真とかない？」
「……は？何で？」
「い、いや可愛ええやろ？」
展開は俺の予想通りに事が進んだ。
適当にキヨくんの気になることを言えば脳内スイッチは完全に彼女へと切り替わるはず。
その後、キヨくんを外に連れ出して彼女のことを思い出して貰えるように誘導した。
ただ、俺が教えるだけじゃ意味がない。
介抱してくれたあの子との時間があったのは俺やなくてキヨくん。
キヨくん自体が思い出さなきゃ意味なんてない。
やっと思い出したあたりで俺はキヨくんを置いて先に店に戻った。
別に思い出さなくても新しい絆さえあればいいんやないかと思ったけど、好きの明確な理由を欲しがってたみたいやったからな。
ここからはキヨくん次第やで。
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luco(プロフ) - 赤の黒犬さん» ずっと温めてきた作品だけに思い入れが強いので真っ直ぐに作品を読んで褒めて頂けて感無量です…！彼だからこの結末になって彼だからこその作品になった気がします。とp4の関係性が大好きなので気を遣って書いたので気に入って貰えて良かったです！ (2021年8月18日 0時) (
レス) id: 2a3978e9c4 (このIDを非表示/違反報告)
赤の黒犬 - 普段常識人だからこそこういう禁断の恋一歩手前のレトさんが凄く輝いている気がしました。lucoさんの人選が流石過ぎます。今回の世界線はそれぞれの立場が切な過ぎて胸痛いです。その分報われて感動でした! それに今回は特にtop4の関係性が見えて最高でした! (2021年8月9日 3時) (レス) id: d5158b45c8 (このIDを非表示/違反報告)
luco(プロフ) - ゆりさん» ゆり様コメントありがとうございます！感情直球とっても嬉しいです！！読んで頂けて本当に感謝です（；_；） (2019年10月11日 11時) (レス) id: 2a3978e9c4 (このIDを非表示/違反報告)
ゆり(プロフ) - すごくすごく好きです。お疲れ様です！ありがとうございます！！ (2019年10月11日 10時) (レス) id: 284b51d183 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：luco
| 作成日時：2019年3月8日 1時
