本当の気持ちは大事にしよう ページ21
撮影部屋にと戻ると怪訝な顔したキヨくんと目が合った。
小さい声に比例して低い声になる(付け加えてちょっと不機嫌さが見えるのもプラスしてる気がする)キヨくんは呟くように言った。
「……どこが好きなわけ?あんなんただの視聴者と変わんねえじゃん」
何となくそう言われることは予想がついていたけど、あまりにそのまま言われて咄嗟には表情は作れなくて俺らしくない顔になった気ぃする。
まあ、そうやね。
でもキヨくんはちゃんとあるんやろうか。
「キヨくんはその子と、どういう経緯があって、こんな理由があって好きですって胸張って言えんの?」
Aちゃんの味噌汁を飲みながら俺は誓ったんや。
周りのいろんなしがらみ突破らって素直に考えて出た時の心の奥の本当の気持ちだけは大事にするって。
彼女と同じような人に出会っても同じことをするのか聞かれたらわからない。
でもあの時、俺と出会ったのは紛れもないAちゃんで、俺とAちゃんの時間はあそこから始まったんや……なんてのはキヨくんに「気色悪」とか言われそうだから言わんけど、多分同じこと迷ってることくらいわかる。
いつもはすぐさま反応があるのに言葉に詰まって考え込んでるキヨくんなんて珍しいからな。
「俺は別にそんなんなくたっていいと思う、好きな理由なんてどれだけ並べたってどうせ全部後付けやん」
「そ、れはわかる」
すとんと心に落ちたような顔にしてんの気付いてんのか?
俺は笑いながら少し伸びをした。
「どうする?続ける?」
「何か負けた気がすっから、あとちょっと撮ってゲームでボコボコにするわ」
「は?何がやねん!俺がいつもいつも負けると思ったら大間違いやぞ」
結局はボコボコにされたんやけど、まあ、キヨくんが納得出来る答えが見つかったんならそれだけでいい仕事したわ。
Aちゃんの飯を「ぉお……」と見つめてたから食ってく?と聞いたらうーんと悩んで今日はいいやと言って帰って行った。
あいつもしかして彼女のシフト記憶しとんのか?
……気色悪、人のこと言えんなぁ、お互い様や。
ふふ、と笑っていたらスマホが震えた。
また忘れ物か?と思って画面を見たらうっしーだった。
「ごめん、電話出てもいい?」
「大丈夫ですよ……部屋にいますね」
洗い物まだ残ってるみたいやし飯の準備も途中だったけど俺の返事も待たずに部屋に戻って行った。
あまりにもスムーズな動作でこれはいつもやっていたことなんだろう……痛む胸を抑えて通話ボタンを押した。
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luco(プロフ) - 赤の黒犬さん» ずっと温めてきた作品だけに思い入れが強いので真っ直ぐに作品を読んで褒めて頂けて感無量です…!彼だからこの結末になって彼だからこその作品になった気がします。とp4の関係性が大好きなので気を遣って書いたので気に入って貰えて良かったです! (2021年8月18日 0時) (レス) id: 2a3978e9c4 (このIDを非表示/違反報告)
赤の黒犬 - 普段常識人だからこそこういう禁断の恋一歩手前のレトさんが凄く輝いている気がしました。lucoさんの人選が流石過ぎます。今回の世界線はそれぞれの立場が切な過ぎて胸痛いです。その分報われて感動でした! それに今回は特にtop4の関係性が見えて最高でした! (2021年8月9日 3時) (レス) id: d5158b45c8 (このIDを非表示/違反報告)
luco(プロフ) - ゆりさん» ゆり様コメントありがとうございます!感情直球とっても嬉しいです!!読んで頂けて本当に感謝です(;_;) (2019年10月11日 11時) (レス) id: 2a3978e9c4 (このIDを非表示/違反報告)
ゆり(プロフ) - すごくすごく好きです。お疲れ様です!ありがとうございます!! (2019年10月11日 10時) (レス) id: 284b51d183 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:luco | 作成日時:2019年3月8日 1時