いつも通りの味噌汁 ページ15
目の下を触るのは泣いた後を誤魔化す為だと俺は気付いていた。
ひとりになると考え込むなら俺の家に住めばいいと考えていたけどそんな軽率なことAちゃんが許諾する訳ないしそもそも俺がそんなこと言えん。
「レトルトさん」
名前を呼ばれて我に返った。
何や考え事してたから難しい顔しとったか、気ぃ遣わせたかな。
「ん？」
小さく短くそれでも俺の中にある優しさの部分の全てを声に乗せて返事をすると、ホッとしたような笑顔を見せた。
「今日のお味噌汁、どうですか？」
そう聞かれて手を合わせてから、湯気のたったお椀に口を付けた。
いつも通りの味噌汁。
味噌とか変えたんか？
そう言うの気付かないのは男としてだめと前にキヨくんに言われたっけ、髪切った？とか……でも俺にはこの味噌汁の違いが何なんか全くわからなかった。
「……いつも通り、美味しい……けど？」
「そうですか、それなら良かったです」
頭にはてなを飛ばしてる俺に気付いたのか、そのまま俺に視線を定めたままAちゃんは話し始めた。
「お味噌汁って安心しません？いつも通りの味噌汁、帰ってくる場所はここだなって思うんです」
俺は何も言えずAちゃんを見ていた。
「だから、お味噌汁だけは、いつも通りなんですよ、どんなときでも」
言わんとしてることが伝わってきて彼女を好きになった、彼女と結婚しようと決意した、旦那さんの気持ちが痛いほどにわかる、わかってしまった。
きっとAちゃんは考え事していたから難しい顔をしていた俺を気遣ったんだろう。
何かあったんですか？とかどうかしたんですか？とか、考えてみればAちゃんと出会ってから1回も聞かれたことなかった。
イライラしたり気持ちやナーバスになってる時にそういうことを聞かれたりするんは正直腹が立つ。
黙っとけ、そっとしとけって俺は思う人間で黙ってるとわかんないから、追求されることが多くて「なんもないねん」て今までの彼女的な立場の女の子には折れてきた。
だって喧嘩したないもん、平行線になるし、俺の気持ちなんてわかってくれない。
そんな生産性のないことなんてしたない。
でもAちゃんも最初はそんな子だったかもしれない。
旦那さんと出会って付き合って結婚してぶつかり合ってく中で仕事で落ち込む旦那さんも奇跡的に俺のような人間だっただけかもしれない。
そこまで考え着いて目の前を見ると黙ってそれでもにこやかに白米を口に運んでるAちゃんと目が合った。
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luco(プロフ) - 赤の黒犬さん» ずっと温めてきた作品だけに思い入れが強いので真っ直ぐに作品を読んで褒めて頂けて感無量です…！彼だからこの結末になって彼だからこその作品になった気がします。とp4の関係性が大好きなので気を遣って書いたので気に入って貰えて良かったです！ (2021年8月18日 0時) (
レス) id: 2a3978e9c4 (このIDを非表示/違反報告)
赤の黒犬 - 普段常識人だからこそこういう禁断の恋一歩手前のレトさんが凄く輝いている気がしました。lucoさんの人選が流石過ぎます。今回の世界線はそれぞれの立場が切な過ぎて胸痛いです。その分報われて感動でした! それに今回は特にtop4の関係性が見えて最高でした! (2021年8月9日 3時) (レス) id: d5158b45c8 (このIDを非表示/違反報告)
luco(プロフ) - ゆりさん» ゆり様コメントありがとうございます！感情直球とっても嬉しいです！！読んで頂けて本当に感謝です（；_；） (2019年10月11日 11時) (レス) id: 2a3978e9c4 (このIDを非表示/違反報告)
ゆり(プロフ) - すごくすごく好きです。お疲れ様です！ありがとうございます！！ (2019年10月11日 10時) (レス) id: 284b51d183 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：luco
| 作成日時：2019年3月8日 1時
