立ち止まる理由の重なり ページ30
目をパチクリとさせていたけれど、やがて堪忍したように「バレますかね」と眉を下げながら照れ笑いをしていた。
あの感じ、お互いにわかっているような気がしたけれど、どうなんだろう。
「立場的なことで悩んでる、ように見えるのはわたしの勘違いですかね」
「……そうですね、あくまで今のキヨさんはお客様ですし」
お姉さんはここの従業員だと言っていた。
ホテルのフロントの人とお客様の関係が壁になっているのかな、そうなのか。
わたしは社内の営業アシスタントいわば、事務だし学生時代も人と接するのは苦手で接客業は一度もしたことはない。
だから接客業の規則の基本的なこともわからない。
どこも同じようなものだろうけれど、出会ったのが職場ならプライベートな時間に会おうが恋しようが勝手な気もするけれど、彼女は所作や対応の素早さや柔軟さを見る限り、真面目で仕事が出来る人な気がする。
空気で人の心も読んでくれる、欲しい言葉もくれる、キヨくんが惹かれる理由もわかる。
「お客様と恋愛するのは規則で禁止されてるんですか？」
彼女は一瞬、目を見開いていて驚いた表情をしていたけれどすぐに柔らかい笑顔に戻った。
「されてないです」
何か理由をつけて、自分が傷つく事から避けている。
「旦那が死んだばかりなのに」
「従業員とお客様なのに」
それに、彼は
「実況者だから」
だからと言って恋をしてはいけない訳では無い。
それを教えてくれたのは紛れもない目の前にいる彼女だった。
命も心も救ってくれた彼女にせめてもの恩返しがしたかった。
「わたしね、」
話始めると彼女はしゃがんで目線を合わせてくれた。
「あの時、出会ったのがわたしじゃなくてもレトルトさんは同じように手を差し伸べていたのかなってよく考えるんです」
キヨくんが詳細を話していないのならこんなことを言っても意味不明だと思うけど、彼女ならきっと点と点を繋ぎ合わせて理解してくれると思った。
予想通り、少し思案してからゆっくりと頷いてくれた。
「でも、出会ったのはわたしだった」
彼女に語るようにして自分の心にも投げかける。
「その運命が偶然でも必然でもそれだけは現実だと思うんです」
「そうですね」
伝えたいことがうまく言葉に出来ずに難しい顔をしていたら、少し笑った彼女は、
「ふふ、わかりますよ、ありがとうございます……また明日伺いますね」
そう言って部屋を豆電球に変えて部屋を出て行ってしまった。
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luco(プロフ) - 赤の黒犬さん» ずっと温めてきた作品だけに思い入れが強いので真っ直ぐに作品を読んで褒めて頂けて感無量です…！彼だからこの結末になって彼だからこその作品になった気がします。とp4の関係性が大好きなので気を遣って書いたので気に入って貰えて良かったです！ (2021年8月18日 0時) (
レス) id: 2a3978e9c4 (このIDを非表示/違反報告)
赤の黒犬 - 普段常識人だからこそこういう禁断の恋一歩手前のレトさんが凄く輝いている気がしました。lucoさんの人選が流石過ぎます。今回の世界線はそれぞれの立場が切な過ぎて胸痛いです。その分報われて感動でした! それに今回は特にtop4の関係性が見えて最高でした! (2021年8月9日 3時) (レス) id: d5158b45c8 (このIDを非表示/違反報告)
luco(プロフ) - ゆりさん» ゆり様コメントありがとうございます！感情直球とっても嬉しいです！！読んで頂けて本当に感謝です（；_；） (2019年10月11日 11時) (レス) id: 2a3978e9c4 (このIDを非表示/違反報告)
ゆり(プロフ) - すごくすごく好きです。お疲れ様です！ありがとうございます！！ (2019年10月11日 10時) (レス) id: 284b51d183 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：luco
| 作成日時：2019年3月8日 1時
