画面とカウンターを飛び越えて ページ44
表面のAしか知らない。
それはきっとAも同じ想いを抱いてる。
女は「好き」の「理由」を欲しがる生き物だ。
相手からの「好き」だけじゃなくそれはきっと自分の「好き」の「理由」も欲している。
それを信じて、それに縋って、生きてる。
動画の俺しか、画面の中の俺しか、知らない。
だから「好き」なんてそんなの「理由」にならないとか、まあ、そんな気持ちもきっとあんだろう。
俺と昔に会ってたことを隠す理由がそこにあるのかは知らねえし、俺はそんな好きの気持ちに理由なんていらねえんだよ。
ここにいて、隣にいて、1秒、また1秒と
それだけが全て。
「A」
「何ですか？」
少し前を歩いていたAが振り返る。
「本当はいろいろ気になることはあるけど、俺はそういうのめんどくせえしAはきっとそうした理由もきちんと説明すんだろ？」
一瞬だけ目を丸くしていたけれど、俺の何も説明していない言葉を頭の中で組み立てて自分の中で理解に努めたAは「おっしゃる通りですね」と微笑んだ。
こんな深夜の住宅街の道のド真ん中、街頭も少ない、少し奥を見るとここよりも明るい大道路が見えた。
「言いたいことは聞きますけど、こんな深夜にここでお話をするのはご近所迷惑になるので……」
「いいから聞いて」
俺の低く落ち着いた声に諦めの色を見せたAはそれ以上、口を開くことなく俺のことを見上げていた。
好きだと言うことに抵抗がないわじゃなかった。
ごちゃごちゃと考えはあったけどそもそも俺は「お客様」として様々なことを拒絶されていることをすっかり忘れていた。
でも、いま、Aと向き合ってるのは「お客様」の「清川様」ではなく「実況者」の「キヨさん」だ。
逸らしていた目線をAの瞳へとゆっくり合わせた。
「俺はいまのAが好き」
真夏だと言うのに時間帯のせいで吹いた風は冷たかった。
俺の瞳を見つめたままAは制止していた。
「シチュエーション、言葉の裏、全て理解しました」
Aはふわっと年齢に相応しい笑顔を見せると、固まったままの俺の右手を両手でぎゅっと握った。
「わたしは2年前の酔っ払いキヨさんも、再会した時のぶっきらぼうなキヨさんも、大好きですよ」
目頭が熱くなった俺にAは言葉を続けた。
「でもいまのキヨさんが1番好きです」
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なみの - とっても面白いですね( ´∀｀)相変わらずの天才っぷり・・さすがです！毎回素敵なお話ありがとうございます(≧∀≦) (11月5日 13時) (
レス) id: 20a9a81cbb (このIDを非表示/違反報告)
luco(プロフ) - 赤の黒犬さん» これは完全に動画内のヨさんのテンションで書いてたので反応どうかなと思っていたので好きと言って頂けて良かったです。たくさんの作品にコメント本当にありがとうございます。レスが遅くなりましたが毎回見て元気を貰ってます！ (2021年8月18日 0時) (レス) id: 2a3978e9c4 (このIDを非表示/違反報告)
赤の黒犬 - キヨさんの嫉妬とか御馳走様過ぎる。キヨさんが元々レトさんに憧れていた節があったからこそキヨさんの嫉妬って映えると思ってニヤニヤしてました。キヨさんがドルヲタとか女優ヲタとして動画内で喋っているテンションで恋して、本人っぽさが倍増するのも好きです。 (2021年8月9日 2時) (レス) id: d5158b45c8 (このIDを非表示/違反報告)
luco(プロフ) - siratama〇さん» siratama〇様、コメントありがとうございます！初の学パロ以外での長編ですので読者の方の反応が気になっていたのですが好みと言って下さりとても安心しました。そして長編に対しての励ましのお言葉もありがとうございます！とても嬉しいです。頑張ります！ (2019年3月9日 22時) (レス) id: 2a3978e9c4 (このIDを非表示/違反報告)
siratama〇(プロフ) - 好みof好みです。長編苦手だと仰りますが胸を張って得意だと叫べるレベルで素晴らしいです。素敵なお話ばかりで読むのが楽しみの１つになっています。ずっと応援しております、頑張って下さい！ (2019年3月9日 20時) (レス) id: 1503b2e324 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：luco
| 作成日時：2019年3月7日 1時
