【実l況l者】マスターキーなんてありません【ky】

その眩しさを誰にも知られないで ページ12

俺達の返事も聞かず俺の手を取ったあやちゃんは「キヨはAの車で来てね！先に行くからいつものデニーズね！」と言ってじゃらじゃらとキーホルダーが大量についた車のキーを振り回しながら扉から出て行った。
何勝手に決めてんだ、あの女、これは完全にあやちゃんにはわたしから、言っときますからご遠慮下さいパターンだろふざけんな。

そんな俺の考えを打ち砕くように「ふふっ」と笑うAの声が聞こえた。
「全くあやちゃんは仕方ないですね、あとは引き継ぎで終わるんで待ってて頂くことはできますか？」
そう言うとふにゃりと前見た時より柔らかく砕けた笑顔を俺に向けた。

「……わかった、あんがとね」

冷静を装ってお礼を言ってそのままロビーに移動した。

いや、待て、いろいろあるけど、あの顔なに？！
クソ可愛いんですけど、なに？あの生き物？？
あんな可愛い顔で笑えんの？
逆にあんな可愛い顔で笑うんだったらどうぞ営業スマイルでいてくれ。
じゃなきゃ、俺の心臓が死ぬし、他の男に見せられたらムカつきすぎてそいつの目潰しちゃうかもしんない。
着替えもあるし結構かかるかと思ってたけど、ものの15分で降りてきたAは他のフロントに気付かれるのはやっぱりまずいのかエレベーターの前で手招きをしてた。
きょうはどこのかわかんねぇけど可愛らしいAラインワンピースを着ていた。
即座に気付いてエレベーター前に行くと「車、地下にあるんで」と待機させていたエレベーターに乗せられた。
もう勤務は終わったはずなのに所作の全てが丁寧でこれはもう染み付いてしまった職業病みたいなもんなんかな。

Aの運転であやちゃんの指定したデニーズに行く間に「2人だとだめなのに、3人ならいいの？」とちょっと意地悪な質問をしてみた。
やっぱ気になるじゃん。
少し迷ったみたいな顔をしたAは「誘ったのはあやちゃんですし……」と口ごもっていた。

「2人が嫌とかそうじゃなくて、清川様はお客様ですし」
「でも今は勤務してない普通のAだし、今の俺はゲーム実況者のキヨじゃなくてただのひとりの男の清川って奴だよ」

だから、キヨって呼んでと続けたかった言葉は「じゃあ、キヨさんですね」と言ってふふっと笑ったAにかき消された。

「わたしはキヨさんのそういう所、とても素敵だと思いますよ」

車のライトを灯すようナビの案内と共に俺の心臓がいつもより近くで聞こえる、気がした。

初見殺しはそりゃ死ぬわ→←隠せてない瞳の意味を教えてよ

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