【実l況l者】薔薇色メッセージ【企画短編】

いつでもきみだけのHero/ky ページ8

はぁ、と小さく溜息を吐いてどうしたもんかとあーだこーだ言ってるキヨの話を右から左に受け流していたら見覚えのある女の子がテーブル席ひとつ挟んだ通路を歩いてるのが見えた。

そんな、まさかまさか、
ゴクリと生唾を飲み込んでからキヨを確認するとやっぱり同じ方向を眺めていたようで目を見開いて「、は？」と声を発した。

「俺ね、見間違いだと思うわけよ」

今にも立ち上がりそうなキヨを両手でどうどうと制止しながら声をかける。

「それにね、彼女にもプライベートとか、友達の付き合いとかあるしね」

そう宥めても無理なことは最初からわかっていた。
それもそのはず、歩く彼女の顔色はかなり悪かったし便所から帰る方向なのにぴったりと後ろにはガラの悪そうな男2人が肩を支えたり嫌な予感が当たりそうな雰囲気がでていた。

さすがに殺しまでは行かずとも傷害事件でも起こされたら困るし、聞くとこによるとAちゃんは未成年らしいし、そういうとこはお兄さん見逃せないなあと言うのは建前て野次馬的な気持ちなだけで怒り狂うキヨの後を着いて行った。

「キヨ、落ち着けよ？大人だもんな？な？」
「俺はいつでも落ち着いてるから」

声のトーンがガチトーンでこれは何を言っても無駄だなと悟った。
俺に出来るのは後処理フォローくらいだな、と苦笑いしか出来なかった。

大広間を貸切ってやってるのは騒ぎ様からして容易に想像がついていた。
さっき店員が「大学生が大騒ぎしててね、うるさかったらすみません」みたいなことをガッチさんあたりと世間話ついでに話してたのを聞いたし。
キヨの場合ほとんど聞いてなかったから野生の勘だろうけど。
なるべくフォローはするつもりだったけど思ったより入口に近い場所にAちゃんがいて、俺は死角になる場所に隠れた。
だって、イキってる大学生とか嫌だもん、俺。
関わらないでいいなら関わりたくねぇもん。

キヨはAちゃんの後ろに立つと、唐突に腕を掴んで立たせてそのまま回転させて胸の中に収めた。
「え？」とその場にいた全員が呆気に取られるくらいスムーズな対応で何度かやったことあるかのようだった。

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