【実l況l者】薔薇色メッセージ【企画短編】

紙ひこうきに繋がる扉/rt ページ30

開演の10分前あたりでざわざわとした騒ぎと、小さな悲鳴が聞こえた。
誰かが来たのだろう、そっと関係者席を覗き込むと白いキャップを被ったその人は毛先が赤く、一瞬でわかった。

キヨくんだった。

また来たのか？
2回目じゃん、自分もドラマの撮影あるのに都合つけてくるとか……愛かよ……。
そう思いながらも凝視していたらパチッと目が合ってしまった。
慌てて逸らしたけれど開演するまですごく視線を感じた、きっとこれはファンサでわたしを見てた！と言う一種のアレだ。
うん、そうそう、と変な冷や汗をかいていらいつの間にかソロコンサートの千秋楽が始まった。

MCでいつも鑑賞してくれる人の紹介してるのに何もされてなくて2度目だからかな？と思っていたけれど、アンコールでキヨくんが今日も来てくれました〜！と突然紹介していた。
驚いていたけど足を組んで観ていたキヨくんは超絶アイドルスマイルでキャップを取って超笑顔でレトさんに手を振っていた。
よくよく見ると会場で売っていたレトさんのうちわも持っている。

「キヨくん、2度目だね……ほんとに、いつもありがとね」

ダブルアンコールで出てきたレトさんの照笑いしながらの優しい言葉にこっちが涙が出そうになった。
キヨくんは満更でもなさそうな顔でニコニコと笑っていた。
キヨくんとレトさんはやっぱり固い絆で結ばれていることがわかっただけでわたしはとても満足だった。

最後の恒例のレトさん投げキッスで1週間のレトルトファーストソロコンサートは幕を下ろした。

キャパの狭い会場故に規制退場はなかったけど、キヨレトの絆に感動して足腰が抜けたわたしはそのまま会場の宙を見ていたわたしに紙ひこうきが飛んで来た。
飛んで来た方角はキヨくんが座っていた席あたりだった。
カサカサと紙を開くと下手くそな地図が書かれていて黒く丸塗りされた場所の下に「ここで待ってて」と書いてあった。

「な、なんなのこれ」

それでもそれを握りしめて頭の中に叩き込んだ地図通りに会場内を駆け回る。
人が疎らになりこんなとこ来てはいけないんじゃないかと変な汗が出た瞬間、後ろから腕を掴まれた。

しーっと口に人差し指をあてたキヨくんは悪戯が成功したように嬉しそうな顔で笑っていた。

「差し入れ忘れちったから、差し入れになってくれる？」

何が何だかわからないと言った顔でキヨくんを見つめ返すと、口角をクイッとあげたキヨくんと目が合う。

「ね？レトさんのお気にちゃん」

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