好きよりもっと近づいて/rt ページ11
見られとんなあ、と気付いていたけど彼女は気付いていないようやし、まあ、ええか。
キヨくんに状況利用されるくらいは構わん。
部活終わりに中庭の自販機に寄るのが日課やった。
いつもの風景の中には先客がいてドキッとしたのもそのはず、密かに想いを寄せてるAさんがおった。
今日は帰るの遅なったし、いつも残り練してるはずのサッカー部は早々に引き上げていた。
ガランとした校舎に囲まれ中庭には俺ら以外にはおらん。
……またとないチャンスなのは明白やった。
去年は同じクラスでよく話せたのにクラスが離れてなかなか接点が掴めずどうしたもんかと思っていた。
「レトくん、久しぶりだね」
「そうやんな、何してたん?」
俺の質問には「んー」とはぐらかすだけで答えてくれんかった。
最初はほんの出来心、本当にするつもりもなかったし、何の疑いもなくしてくれるなんて俺だって思ってなかった。
「あれ?Aさん、目の下まつ毛ついてる」
「ほんと?……取ってくれる?」
「ええけど、顔近いと恥ずいから目瞑ってくれる?」
好きな子のキス待ち顔なんてそうそう拝めるもんでもない。
こんな言い訳じみた提案に乗ってくれるなんて、現実は甘くない。
しかし俺の目の前に広がった光景は脳が惚けるほど甘いものだった。
「いいよ、はい」
そう言って目を瞑ったAさんが一歩俺に近付いた。
全身で感じる心臓の音に心臓破裂して死んだらどないしよ、なんてアホなこと考えてる時に目線を感じたわけでね、まあ、そんなこんなで今。
ええい、ままよ!と肩を掴んでその唇に自分の口元を押し付けた瞬間、生温い風が吹いてAさんのスカートを揺らした。
ゆっくりと瞳を開けたAさんは驚くこともなく、くすりと笑った。
「作戦成功、かな?」
「……は?」
ぽつぽつと雨が降ってきた。
Aさんは中庭前通路から校内へ入って手招きしてきた。
頭が混乱して何が何だかわからん。
けど、濡れたくなくて校内に入ると「レトくんの作戦も成功したけどわたしの作戦も成功したんだ」と少し頬を染めながら言ってきたAさんの手を握った。
「そういう顔されると、期待するんやけど」
「……期待させるための作戦だもの」
好きが爆発しそうで目頭が熱くなって泣きそうになった。
目の前の細くて白い手を取って「まだまつ毛ついてるから目瞑って貰ってもええ?……A」と言うと「いいよ」と微笑んだAは目をゆっくり閉じてから少し背伸びをしてくれた。
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luco(プロフ) - かりんさん» かりん様、温かいコメントありがとうございます!gtさんのお話はなかなか慣れないのですが読みたい方がいらっしゃるので今回頑張りました!次回作も最後の方に出すつもりなので楽しみにして下さると嬉しいです! (2019年8月6日 0時) (レス) id: 2a3978e9c4 (このIDを非表示/違反報告)
かりん - 完結おめでとうございます!いつも楽しく読ませてもらっていました。gtさん大好きなので今回gtさんのお話が沢山あってとても嬉しかったです!次回作も読ませていただきます! (2019年8月6日 0時) (レス) id: e9726304d4 (このIDを非表示/違反報告)
luco(プロフ) - りんご様、完結おめでとうのお言葉ありがとうございます!ドルオタなのでドルパロが大好きなもので.......お褒め下さり嬉しいです!頑張ります! (2019年8月5日 21時) (レス) id: 2a3978e9c4 (このIDを非表示/違反報告)
りんご - こんばんは!完結おめでとうございます!ドルパロ良いですね!長編が楽しみです!頑張ってください! (2019年8月5日 21時) (レス) id: ed57538bc3 (このIDを非表示/違反報告)
luco(プロフ) - りんごさん» りんご様こんにちは!同担様でしたか!中々同士様がいらっしゃらないので嬉しいです。新作もお読み頂けてありがとうございます(*¨*)例に漏れずドルパロでしたがお褒め下さり嬉しいです。 (2019年7月29日 18時) (レス) id: 2a3978e9c4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:luco | 作成日時:2019年5月18日 5時