【実l況l者】きみを振り向かせる正解は【ky】

LikeじゃなくてLoveをくれ ページ33

俺の大人げなさ全開の言葉により返す言葉を失ったらしい。
Aに誕生日おめでとうと声をかけ自転車を漕ぎ出し帰って行った。
その後ろ姿を見つめるAを俺はジッと見つめた。
彼氏じゃないとは言っていたけど、好きじゃないなんて言ってなかったはずだ。
変な焦りを感じながらも変わらずAを見ていたらチラと見上げてきて目が合った。
のに、すぐ逸らされ反射的に声を掛けた。

「おい」
「何ですか？」
「この前のLINE、あいつじゃねえの？」
「そうだけど、」

頭より先に身体が動いた。
考えるよりも先に言葉が勝手に口から滑り落ちる。

「ちょ、ちょっと何？離してよ、帰るんでしょ」
「好きなの？あいつのこと」

変な沈黙が流れた。
目の前のAの瞳がゆらゆらと揺れている。

「好きか好きじゃないかで聞かれれば好きだけど」
「……だけど？」
「キヨ先生の方が……好き」

えへへと笑った顔に恋愛感情は一切含まれてはいなかった。
何となく虚しさを感じながらもその言葉はさっきまで胸の中を支配していた靄がかった気持ちを晴れさせるほど染み渡った。
緩む頬が隠せなくて少しはにかんで笑って「ばーか」とその小さな頭をコツンと叩いた。

「帰んぞ、色ボケなんかして、次の俺の小テスト悪い点取ったらまた泣かすぞ」

顔を見られるのを避けるように先に歩き出す。
トトトッと少し小走りする足音が聞こえて横に並んだと同時に歩幅を合わせる。
つーか、何でこいつ、いつも車道側歩くんだ？
自然と車道側にいるAの肩をぐっと押して歩く位置を変えた。

俺の「好き」とAの「好き」は違うという事実を突きつけられたのは俺が独占欲丸出しにして考えもなしに同級生と張り合ったせいなのはわかっていた。
せめて同学年なら俺のことも恋愛対象として見てくれた？
俺がAのこと、1人の女として好きって言ったらどんな顔する？
Aが不安な顔すれば抱きしめて安心させたいし泣きそうになったら手を握って傍にいてやりたい、護りたい、こんな気持ちになったのはAしかいねぇんだよ。

そんなことを考えていたけど、今日も無事に家まで送り届けた。

「じゃあな、また」

あいつと同じように手を振るがAはお辞儀をして「ありがと、ございます」と言って家に入っていった。

普段は俺が教える正解。
けど、これだけがどんなに考えてもわからない。

Aを、

きみを振り向かせる正解は？

間違えずに回答出来る自信がちっともねえよ。

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