silver ringと言う名の手錠 ページ28
驚くと言うよりは声が出なかった。
冷静を装う以前に脳の処理が追いつかず、表情を崩すこともなく真顔でいるしかなかった。
成長のスピードえぐすぎだろ、マジで。
出会った時、幼さ残る女の子だったAは、完全に女になっていた。
人見知りは直っていないようで久々に会ったAは俺を警戒していて、あの頃はキヨと呼んでいてくれたのに先生を付け始めた。
他の生徒にもキヨ先生と呼ばれていたから違和感はなかったけど何となく胸にかかったモヤは消えなかった。
スカートが短くて気になる、綺麗な黒髪は随分と伸びた、他の女みたいに変な香水の匂いもしない、屈託なく向けられる面影残る笑顔、そして耳に響く甘く柔らかい声。
俺の問題にペンを走らせるAを見て、この子は生徒、と何度も言い聞かせた。
Aの初回の授業を終わらせて着替えようとロッカールームに入ったらレトさんと鉢合わせた。
「おつかれさん」
ヘラヘラと笑う間抜けな顔に、どことなく安心した。
いや、だって、あんなんもう
「……心臓に悪ぃよ」
「お?例の子初回やったんやろ?」
「わかるか?俺を救ってくれた女の子が女になって俺の前で足を曝け出して笑いかけられる俺の気持ちがわかんのか?!」
俺に詰め寄られたレトさんは、まあまあ落ち着けやと宥めてきた。
着替え終わったレトさんは着替えをする俺をまじまじと見つめてきた。
「んだよ」
「好きなん?」
「………………は?」
「だから、好きなん?」
ドキッとした。
核心を突かれたと言うか、あの頃、考えていたことが蘇った。
そりゃ、大事で大切な生徒。
偽りの俺の中から本当の俺を見つけてくれた、唯一の子、これは恋か、やっぱり恋と言うやつなのか?
焦りを隠しながら冷静を装った俺だったけど、動揺しているのは明らかだった。
「生徒だぞ?しかも高校生、犯罪だろ」
「別に、今ならどっちも学生やし?」
そんな俺を見てレトさんは口角をあげてニヤニヤしていた。
クソッ、何か腹立つ。
「それに俺には日菜が……」
薬指に光る俺を縛り付けるシルバーリングを見つめる。
そんな俺を見てレトさんは眉を下げて弱く笑った。
「……手錠みたい、自分の気持ちには素直に生きな?」
肩を叩かれて、レトさんを見上げる。
「変なしがらみとっぱらってさ、好きなんを選べば自ずと答えは出るんやない?」
「カッコつけ野郎」
自分の生徒にほの字のやつに言われてもなあ、と思いつつ少しばかり感謝するぜ、レトさん。
それでも感謝を込めてGood-bye→←まさかこれが初恋なんて-2-
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なみの - 返信ありがとうございます!まだ占いツクールやってるみたいで嬉しい(?)です。これからも応援しております・・! (11月5日 13時) (レス) id: 20a9a81cbb (このIDを非表示/違反報告)
luco(プロフ) - なみのさん» お返事遅くなりすみません。コメントありがとうございます!お友達の神絵師に表紙頂いちゃいました…!背景に全ての要素入れて貰ったので併せて見て頂けると嬉しいです。かっこいいヨさん目指してたので伝わってて良かったです。 (11月2日 8時) (レス) id: 4134a90f62 (このIDを非表示/違反報告)
なみの - 最初の絵、背景に色々描いてあったけどちゃんと要素入ってたんですね!細かい、、 (10月14日 19時) (レス) id: 20a9a81cbb (このIDを非表示/違反報告)
なみの - 見ました・・・泣いちゃった・・・純愛っていいね。キヨさんかっこよすぎるよ、、、 (10月14日 19時) (レス) @page50 id: 20a9a81cbb (このIDを非表示/違反報告)
なみの - ぎゃっ話まだ見てないけど神絵師様じゃないですか!! (10月14日 14時) (レス) id: 20a9a81cbb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:luco | 作成日時:2018年9月26日 3時