【実l況l者】きみを振り向かせる正解は【ky】

きみを振り向かせる正解は-1- ページ47

最後の授業をクリスマスに設定したのはわざとだった。
前回の授業でお話していいですか？と畏まった感じで聞かれて正直心臓爆発しそうになったけど、冷静を装いつつ心では快諾した。
買うつもりはなかったクリスマスプレゼント。
話をするしないより前に最後の今日、俺は元々言うつもりだったし……断られるとしても。
断られたらこれは渡せない。
なのに、このプレゼントを選んだのは願掛けみたいなもん。

Aは前回の授業はしおらしくしていたくせに今日は異常にいつも通りだった。

「テストどーだった？」
「まあまあかな、わたし元々優秀だし？」
「はあ？俺のおかげだろ、俺の」
「自意識過剰では？」
「それはお前だろ」

結局、今日が最後だからテストの振り返りだけした。

「話どこですんの？」
「え、あー、裏口は人通り少ないんでそこらへんで」

髪をやけに触ってへへへと笑いつつも眉は下がってら。
アフターフォローも終えて望月さんや事務スタッフに御礼を言ってから何も言わずそのままAは先に塾を出た。
俺も来月やる打ち上げまではもう来ないしその場にいる他の先生や望月さんと事務スタッフに挨拶して外に出た。

何言うかなんて決めてない。
決めれば良かった、歩を進める度に心臓の鼓動は速くなるし、あんなに時間があったのにそれとなくじゃなくてもっとわかりやすく態度に出せば良かった。
もっと同級生目線でいれば？
もっと大人らしくいれば？
テストみたいに最善の対策なんて出来れば、そうすれば結果が良い方向に転がるかもしれなかったのに。

「キヨ先生！」

裏口から出たらAは嬉しそうに駆け寄ってきた。

「雪だよ、雪降ってきた！」

空を見るとポツポツと雪が降っていた。
はしゃぐAにホッとする。
変わってく周り、変わってく環境、変わってく世の中の中で変わらないAに俺は救われたんだよ。

「ガキだな」

笑って呟くと雪を見ていたAは一瞬にして怪訝な表情になった。

「……子供扱いしないでよ、わたしあの頃より成長したんだよ？大人らしくなりたくてわたしだって、」

震える唇で言葉を紡ぐAに「ガキ扱い出来ねーから困ってんだろ？！」と頭が動くより先に気付けばキツめの口調の言葉が出ていた。
Aは目を丸くして「……え？何、どうしたの？」と戸惑っていた。

「俺はずっとAに」

Aの瞳を見つめる。

「変わらないAに救われてきた」

ずっと言えなかった、言いたかった、

「……好きだよ」

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