【幕末Rock】もう一度、ここから始めよう。【桂小五郎】

第四話 ページ4

貴「……ん、あ、れ…?」

高「…気が付いたか?お前、街で倒れたんだぜ。」

心配そうに顔を覗き込んでくる晋作。

ああ、多分あのときの声は晋作の声だろう。

貴「心配かけて、ごめん」

高「………A」


名前を呼ばれたと同時にぎゅっと抱きしめられる。


貴「し、晋作っ…!」


高「…泣きたいなら、泣け。抱え込むな。」


子供をあやすようにぽんぽんと数回、頭を撫でられる。

すると、今まで溜め込んでいたものが涙となって一気に溢れた。


貴「っ、ひっく……っ」


ポツポツと雫が落ちて、晋作の着物に模様を作り出していく。


高「…なあ、A。」

貴「な、に…」




高「こんな、弱ってるときに言うつもり無かったけど…お前が、好きだ。」




貴「はっ、はあっ!?」


何かの冗談かと思ったが、晋作の目はいつになく真剣だ。

高「桂さんの事で、ずっと苦しむお前を見たくない…」



確かに、そうかもしれない。

このまま苦しい思いをし続けるより、いっそ新しい恋をすればいい。




けど――――――



貴「…ごめん、晋作。」

まだ私、小五郎の事が好き。

まだ私、この気持ち捨てられない。

まだ私、この恋諦めたくない。

まだ私、逃げるわけにはいかない。




そんな私の心情を読み取ったのか、晋作はもう何も言わなかった。



貴「…ありがとう。」




――――――――――――――――――――――――



その頃、一部始終を見ていた男が一人。


?「すいません、A。」


これ以上、あなたを巻き込みたくないんです…




男の小さな呟きは、蒼い夜の闇に消えた。

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