第21話 ページ30
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嵐が去り、急に猛暑が訪れた。
社泊をしていたわたしを気遣った淳太さんが、今日は早く上がれと言って仕事をフォローしてくれたので、いつもこうだったらいいのになぁと言ったら“あまえんなよ”と一蹴されてしまった。
いつもより早い時間に家路についたので、外はまだ明るく気温も高い。
セミがジリジリと鳴いているのを聴くと、ああそういえば世間は夏休みだよなぁなんて思う。
暗幕で薄暗いスタジオで、冷たい床にぺったりとあぐらをかいて座ると、ここにくるまでの道中に上昇した体温がじわじわと冷やされていくようだった。
「はいよ、梁ちゃん」
「あ、ありがと」
スタジオ主である神ちゃんが、“食う？”と言って差し出したのは棒つきアイス。
学生の頃よく食べていたソーダ味は、青春の味。
一口噛んでしゃくしゃくと咀嚼する。
「夏だねー」
「青春って感じやなー」
神ちゃんもわたしにならって隣にあぐらをかいて座る。
「ごめんね急に押しかけてきて。」
「ええよ。今日データ整理ぐらいしかすることなかったし。」
神ちゃんが、“モニターとにらめっこして肩こったわー”と言って肩をぐるぐる回す。
データ整理ぐらいで肩こりとは、まだまだだな。
「で、今日はこれを見るために来たん？」
これ、と言うのは、学生の時二人で制作したアートパネル。
色とりどりの熱帯魚たちが、気持ちよさそうに泳いでいる。
タイトルは、『ここにいるあなたへ』
「……藤井流星だった」
「…んっ？」
わたしが急に脈絡のない名前を口にしたので、神ちゃんが一瞬混乱する。
「これ展示した学園祭の日にね、わたし寝ちゃってたでしょ」
「うん」
「誰かがそばにいた気がずっとしてたの。」
わたしがうっそりと喋るのを、神ちゃんは隠れた真意を汲み取ろうとするかのように神妙に聞いている。
「それが、藤井流星だった。」
流星。
そう口にした瞬間、唇がカッと熱を持つようだった。
＿＿また会いたいって、ずっと思っとった
あのころ、わたしが作品に込めたメッセージが、たしかに誰かに伝わっていた。
それが嬉しかった。
そこへ突然に放り込まれた。
＿＿だいすきやで。ゆり。
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るーちょ(プロフ) - まっちゃさん» コメントありがとうございます！応援いただきとても励みになります(T-T)最終話までぜひお付き合いください。 (2019年7月19日 20時) (
レス) id: 5adc9338ef (このIDを非表示/違反報告)
まっちゃ(プロフ) - とても面白いです！ 応援してます！ (2019年7月19日 6時) (レス) id: 622cccb941 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Lucio | 作成日時：2019年7月8日 18時
